LOVE in Alaska 星のような物語
「LOVE in Alaska」 星のような物語
星野道夫 2006/09 小学館 単行本 95p
Vol.2 No.557 ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★★☆
この小さな写真集を見ているだけで、火星や土星や月を、人間が住める環境にしてしまおう、などというテラ・フォーミングという試みが、いかに人間の思い上がった発想かを、思い知らされる。これだけの自然界を人間が作れる訳がない。たしかにひとつのきっかけを、ちょっとしたほんの小さな働きかけをすることができるかもしれない。しかし、そのことは本当にごくごくわずかなことだ。
自然界、あるいは宇宙は、すでに大きな摂理の中で生きている。森にはいり、道をつくり、木を切り倒し、家をつくる。木の実をもぎ取り、小川の水を汲み、畑を作ることくらいは、自然界はいつでも大目に見てくれるだろう。だが、いつか森から人間が去っていった後、森は静かに、ものごとすべてがもとあったままのほうにもどっていくだろう。
アラスカにあっては、もっと自然は厳然としているだろう。入るべき森はなく、つくるべき道などない。切り倒す木もなく、もぎ取るべき木の実もない。水を汲むべき小川もなく、畑など作りようがない、かもなどと想像したりする。厳寒のアラスカの自然など、このような写真集でしか知りようのない私だが、このむき出しの大自然に囲まれて、人間も生きていることに感動する。
クマが、鹿が、魚、鳥、トナカイ、山羊、あざらし、そして花々。山並、雪の平原、雲、空、小動物たち、そしてオーロラ。この大自然の中で、人間も生きている。人間も生かされている。ここに生かされている人間たちは、この自然を造り変えようなんて思ってもいないだろう。人間も、生かされている。他の動物たち、植物たち、氷や、岩々や、うさぎや、子供たち。大きな命の連なりだ。
星野道夫の仕事は、つきることのない大自然の美に支えられている。どこまでも澄み切った愛によって表現されている。「LOVE in Alaska」というタイトルをごくごく素直に受け取ることができる。いや、この本は「LOVE on the Earth」だ。「LOVE」と、ひとこと、それだけでいいかもしれない。惑星探索機「ボイジャー」のようにアラスカに飛び立ち、アラスカに眠った星野道夫の愛のメッセージが届く。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)









最近のコメント