プロセス・アイ<1>
「プロセス・アイ」 茂木 健一郎 2006/01 徳間書店 単行本 Vol.2 No.543 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
茂木健一郎のブログを見たら、今日の日記に次のような事が書いてあった。小説「プロセス・アイ」の部分の一部だが、気になる内容だ。
20世紀末から始まったインターネット上のオープン・ソース・ムーヴメントにより、共産主義は、少なくとも理念上は、訴求力を取り戻しつつあった。オープン・ソース方式では、その先駆けになったコンピュータのオペレーティング・システム、『リナックス』のように、多くの技術者がボランティアとしてその開発に取り組む。必ずしも、その開発から経済的報酬を得ない。仲間内の名誉や、自分自身の技術力の進歩など、無形の報酬を得ることで満足したのだ。これは、インターネット上に実現した知的財産の共産主義だと言って良かった。
やがて、オープン・ソース・システムは、多くの分野に広がっていった。デジタル・ネットワーク時代が、ネット上の共産主義を要求したのだ。その結果、少なくともネットワーク上では、共産主義という思想に対する訴求力は強まるように見えた。経済改革がうまくいって、中国経済が規模の上で日本経済を抜いた今日でも、政治制度が中国共産党の一党独裁という形を保てたのは、そのせいかもしれない。
もっとも、ネット共産主義の主役は、中国ではなく、アメリカだった。かつての共産国が、いまや世界でも有数の資本主義経済の国家であり、一方で、世界最大の経済大国が、同時に最大のネット共産主義の国であるという、19世紀のイデオロギーでは理解できない現実が世界を覆いつつあったのである。
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