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2009/04/08

フューチャリスト宣言 <2>

<1>よりつづく
フューチャリスト宣言
「フューチャリスト宣言」
梅田望夫 /茂木健一郎 2007/05 筑摩書房 新書 213p
★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆

 前回この本を読んだ時は立ち読みだった。それに当時はレイ・カーツワイルの「ポスト・ヒューマン誕生」「スピリチュアル・マシーン」「加速するテクノロジー」などを読んでいて、どちらかというとシンギュラリティという概念や、シンギュラリアリアンなどという言葉に魅力を感じていたので、この二人の対談はむしろ牛車の歩みとさえ感じられていた。

 しかし、どうもシンギュラリティという概念は、それほど大きく展開せずに尻つぼみになってしまっていた。先端的(かどうかはさだかではないが)である分だけ、追随する書籍が少ない。かろうじて「デジタル・ネイティブ」でその片鱗を見つけることができたが、まだまだ一般的ではなさそうだ。

 そんなこんなで、ゆっくりこちらの本を読み返してみようと思っているうちに、2008年はチベット・ブームとなってしまい、どんどん後回しになってしまっていた。今回、ようやくそのチャンスがめぐってきたわけだが、この2年間のギャップは、無駄な足踏みだったとも思えるし、必要なインターバルであったとも思える。

 今回、この本については、梅田望夫サイドよりも、茂木健一郎サイドからのアプローチとなる。梅田の「ウェブ進化論」は、当ブログの出発点になった本ではあるが、その先進性に敬意を表しながらも、どうしても埋めきれないギャップというものを感じ続けてきた。いわくシリコン・バレーありきだし、いわく大企業コンサルタントであるし、他人を載せる時のスタイルに、やや異質なものをとことん見せつけられたイメージが残ってしまっている。

 一方、茂木の方は、もともとあまり関心を持っていなかったのだが、彼の唯一という小説「プロセス・アイ」に目を通してみて、かなりのシンパシーを感じたのであった。世代的に茂木のほうが上であるのかと思ってみたが、1960年生まれの梅田に対して、1962年生まれの茂木。茂木のほうがわずかに年下なのには、ちょっと驚いた。

 昔、山口百恵を評して「時代と寝た」というような形容詞が使われたことがあったが、茂木に対して、私はこの「時代と寝た」という同じ形容詞を冠したいと思った。つまり、梅田のほうは、ある意味で偏狭であり、鋭敏なスペシャリスト的なピリピリしたものを感じるのだが、茂木のほうは、むしろもっと寛容なイメージがある。このキャパシティの広さは、特段に彼のもっている個性というよりは、つねに時代にアンテナを広げて、なんでもかんでも受容しようとしてきた証しなのではないか、と感じることとなった。

 われわれ研究者は、古典的なAIというのはもう終わっていると思っていたのですが、それは間違いだった。実際グーグルが使っているのは、グッド・オールドファッションのAI(good old fashoned A.I.)で、それでも役に立つサーチエンジンができた。
 過去20年くらい、脳科学者たちは「身体性が重要だ」ということを言い続けてきたのですが、どうやら風向きが変わった。グーグルが出てきた瞬間に、ロボットの見え方も変わった。
p080

 田中伸和「アトムの未来」で、当ブログもAI(人工知能)を考え、相対化されたところにある人間の脳とはなにかを考え、人間とは何か、ということを考えてみた。そして身体性が必要なのだ、と思ってきた。しかし、ここにきて茂木のこの発言である。なにやら風雲急を告げる展開が予想されるようになってきた。

茂木 おそらく意識とか認知過程の本質が、我々の代で解けるということはないと思うんですよ。僕は97年に「脳とクオリア」という本を出して、もう10年くらいこの問題を考えてきているんですが、考えれば考えるほど、意識の問題をいま最終的に解くということは不可能だと思えてくる。p114

 さあ、ここで言っている「意識」こそ、当ブログ<2.0>において、心あらたにして切り込んでいこうという分野である。とっぱしの初めにおいて、「最終的に解くのは不可能」と宣言されてしまうと、ちょっと拍子抜けするところもあるが、当ブログとしてはこの結論で構わないのである。いやむしろ、想定されるべき答えは、こうでなくてはならない、とさえ思えている。既知、未知、不可知。意識というものは、ついに不可知である、という結論は容易に想定できる。だが、旅を始める前に、他人のみやげもの饅頭を食べ始めてはいけない。当ブログは当ブログとしての旅をはじめることにする。

<3>につづく

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