スーフィーの物語
「スーフィーの物語」 ダルヴィーシュの伝承
イドリース・シャー /美沢真之助 1996/07 平河出版社 単行本 373p
Vol.2 No.586★★☆☆☆ ★★★★★ ★★★★★
スーフィーとはアラビア語でイスラームの神秘家を意味し、貧者の象徴である羊毛(スーフ)の粗衣を着ていたので、そのような呼び名が生まれたのだと一般に考えられている。スーフィーはまた、ファキールやダルヴィーシュと呼ばれることもある。ファキールとは、字義通りには「貧しい者」を意味するアラビア語であり、ダルヴィーシュとは戸口から戸口へと物乞いをしてまわる者を意味するペルシャ語である。普通、スーフィーという名称は、神秘道に精通した者だけに使われ、修行中の者はファキールとかダルヴィーシュと呼ばれることが多い。「訳者あとがき」p356
先ごろWBCで活躍したダルビッシュ有の名前も、このイスラム神秘主義に関わる名前だろうか。現在の米国大統領の名前も、正式にはバラク・フセイン・オバマ・ジュニア。グローバル時代に生きる現代の地球人たちにとって、ダルビッシュやフセインという名前の意味をキチンと把握しておくことの重要性がどんどん高まっている。
もしイスラムを理解しようとしたら、このスーフィーから入るのが一番分かりやすいのだろう。この本は、スーフィーの物語を82集めている。ひとつひとつの物語は小さなお話だが、決して小話のようなオチがついているとは限らない。ひとつひとつが開かれたストーリーであって、解釈は読む者の理解力にかかっている。ある意味では、故事ことわざや禅話、公案にも通じるものがある。
59番には、「不可解な人生を歩んだ男」として、ムジュードという名の男が紹介されている。これはOshoのもとで「MOJUD」という綺麗な絵本となっている。
御者を思い描け、彼は馬車に乗り、馬を操っている。馬車は知性を表しており、そのおかげで人間はいま自分がどこにいて、何を為すべきかを知ることができる。馬車は人と馬が一体となって働くことを可能にしている。このことをわれわれは、外的な形とか、組織化と呼んでいる。馬は馬車を走らせるに必要な動力であり、感情や情熱と呼ばれる心のエネルギーである。御者は他の二つよりも優れた方法で、馬車の存在理由や可能性に気づくことができる。御者がいなければ、馬車を正しく動かすことも、目的地に到達することも不可能である。「77----馬車」 p310
ここでのアナロジーは、当ブログにおける3コン論に対応しているように思う。コンテナとしての馬車。コンテンツとしての馬。コンシャスネスとしての御者。科学、芸術、意識に対応させているのだが、はて、うまくいくだろうか。馬車を使わず、裸馬に直接乗ったらどうだろう、とか、鉄道のように、コンテナとして動力をそなえている場合はどうする、とか、御者は一人で自分の足であるけないのか、という、お遊び、は別に機会に譲ろう。
さて「(私家版)OSHOのお薦め本ベスト10」のなかに、ZEN、ハシディズム、スーフィーがうまくバランスよく配合されているのは、とても面白いと思う。面白いと思う反面、このリストからはタントラがすり抜けてしまったことが、ちょっと惜しいと思う。トップのW・ライヒから補追のD・H・ロレンスまで、エロスで固められているのだから、それで足りるかな、とも思ったが、それでもやはりタントラは欲しい。
このお勧めリスト、よくよく見てみると、必ずしも元々のリストの上位にあったものではない。
☆01 「聞け小人物よ!」 W・ライヒ SS11-No1
☆02 「人間の未来の心理学」 P・D・ウスペンスキ SS10-No9
☆03 「サイコシンセシス」 ロベルト・アサジョーリ SS14-8
☆04 「宇宙の新モデル」 P・D・ウスペンスキー SS8-2
☆05 「手放し」 ユベール・ブノア SS4-6
☆06 「ハシディズムの話」 マルティン・ブーバー SS12-1
☆07 「スーフィーたち」 イドリース・シャー SS9-No4
☆08 「父と子」 ツルゲーネフ SS13-No7
☆09 「詩学」 アリストテレス SS16-4
☆10 「アウトサイダー」 コリン・ウィルソン SS11-1
次 点 「資本論」 カール・マルクス SS12-3
追 補 「精神分析と無意識」 D・H・ロレンス SS13-9
上記画像は完全版ではないが、たまたま手元に集まっているので、フォト・セッションをしておく。当ブログでは、「手放し」と「資本論」は未読だが、大体がもともとの168冊のリストの後半に位置するものが多いようだ。後半になってしまったが、前半部とのバランスととるためにOshoは「お勧め」を繰り返したのではないかなぁ、と邪推したりしてみる(笑)。それに比して、タントラは、点数は必ずしも多くないが、リストのかなり上に登場しているものが多い。
「ミラレパの十万歌」ミラレパ SS1-No10
「サラハの詩」サラハ SS4-No3
「ティロパ」 SS4-No4
「ヴィギャーナ・バイラヴァ・タントラ」シヴァ SS6-No9
「タントラ美術」アジット・ムケルジー SS15-No4
「タントラ絵画」アジット・ムケルジー SS15-No5
この愛されるべき「私が愛した本」、ツァラトウストラから始まってアラン・ワッツにつながり、ひとつの円環をなす限り、いずれが高い、いずれが低いということも言えないが、全体としては、タントラ文献は上位にランクされているだけで、すでにお勧めと言えるだろう。だが、本としてのタントラではなく、瞑想したり、研究したり、読んだりするタントラではなく、道としてのタントラが、Oshoの元では強調されている、と理解すべきだろう。
この「お勧めリスト」にさっと目を通して思うことは、これはこれでバランスがとれているということ。そして、グルジェフ+ウスペンスキー関連の再読が必要だということ。未読本もまだまだ残っている。小説や文学関連もかなり残っているが、こちらは後回しかなぁ・・。そしてやはり集約されるべきところは「ブッダ達の心理学」ということになるのだろうか。
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コメント
スーフィーディズム。ハシディズムとともに、いつか余裕がある時に、もう一度追っかけを再開したいものだ。
投稿: Bhavesh | 2018/09/18 18:40