芸術脳
「芸術脳」
茂木健一郎 2007/08 新潮社 単行本 207p
Vol.2 No.564 ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★★☆
脳科学者、という触れ込みが、私にはどうも相性がよくないらしい。いや、「脳」という物質になにごとかを集結させようとする試みが、好きになれないのかも知れない。だから脳科学者という触れ込みだと、「バカの壁」の養老孟司あたりを連想して、どうも私のイメージ力は委縮してしまうようだ。
ところがこの本は、対談集であり、編集者のアイディアによるものだろうが、「芸術脳」というタイトルにちょっと惹かれるものがあった。ただ、ここで芸術--脳とつなげてしまっていいものだろうか、と正直思う。
フリー・ペーパーの企画でおこなった連載対談の10人を取り上げて一冊になっているものだが、対談している人々の顔ぶれもなかなか素晴らしい面々だ。別段に脳みそのことが話題になっているわけではないが、「芸術」畑の対談者に対する、「脳」科学者という対置のしかたなのだろう。
茂木 2年に1回、アリゾナ州のトゥーソンで、意識についての国際会議があるんです。周りはサボテンばっかりの場所なんですけど、そこに行っても日本人の学者はあまりいない。きっと意識の問題とかに興味を持っていないんですね。それはなぜかというと、たぶん、60~70年代のカウンター・カルチャーを経由してないから。当時の意識の解放を試みたカルチャーを一度経験していると、世界の見え方は絶対に変わってくるし、その人の考えにも深みが出てくる。p64
茂木という人についてあまり関心を持っていなかったのだが、次第次第に波長があってきたのには、このような茂木自身のバックグランドと、当ブログの指向性がすこしづつオーバラップし始めたからだろう。
いとう(せいこう) なぜ、いまの日本には希薄なんでしょうね。日本にもずっと瞑想という文化があったのに。p64
いとうには、名前のありかたから関心をもっていたが、この人についてもあまり知ろうとはしてこなかった。しかし、この本の中で二人が対談していることには、かなり興味が湧いてきた。たぶん、このふたりとも私よりはずっと若いが、なにごとかの時代体験がオーバラップしているのだろう。
松任谷由美との対談も面白い。
茂木 たとえば「いちご白書」にある「就職が決まって髪を切ってきた」なんていう歌詞は、もう、とんでもなく衝撃的で、このメロディにこんな感傷的な詞を書けるのはこの人しかいないだろうっていまも思っているんですけど。p85
当ブログでは先日、「昔、革命的だったお父さんたちへ」を読んだところだった。「『いちご白書』でオシマイですか?」なんてあたりでは、泣いたり、笑ったりしてしまった。このあたりの感性なら、私も共感できる。
ウィキペディアを見ると、茂木健一郎という人にも、いろいろ批判者がいるようだ。大槻義彦教授あたりからの批判がありそうだ、ということはなんとなく察しがつくが、その原因が江原啓之あたりとの交流にあるとするなら、大槻教授にも一理ありそうな気がしてくる。
でも、瀬名秀明あたりからも批判がでてきているとすれば、もうちょっとつっこんでその訳を知りたくなる。「知能の謎」や田中伸和「未来のアトム」など、当ブログ<1.0>でもちょっとかじっただけで、中途半端になってしまったカテゴリがあった。こちらも折りを見て、復活させよう。
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