「クラウド・ビジネス」入門
「『クラウド・ビジネス』入門」 世界を変える情報革命
林雅之 2009/03 創元社 単行本 198p
Vol.2 No.561 ★★★★★ ★★★★☆ ★☆☆☆☆
さて、この本をどう読むか。著者は、IT関連の会社に勤める会社員で、群馬県に住みながら、片道2時間かけて都内に新幹線通勤をしているというブロガーである。「『ビジネス2.0』の視点」というブログらしいのだが、残念ながら私は読んだことはない。今後気になることがあれば読んでみたいと思う。
ブログが一冊の本になるというのは慶賀に堪えないが、しかし、クラウド・コンピューティング、あるいはクラウド・ビジネス、と言われているものを、素朴に、素直に受け入れることは私にはできない。この言葉が日本で一般化したのは、本書にもでてくるように、NHKのテレビ番組だった。
転機となったのは、2008年10月15日、NHK「クローズアップ現代」で放送された「新情報革命”クラウド”の衝撃」という番組だ。我々にとって「クラウドの衝撃」というよりも、この時期、ゴールデンタイムのNHKで「クラウド」が取り上げられたことの方がはるかに衝撃的だった。p001
私もこの番組を見た。その時の印象はあまり良い物ではなかったし、その発想自体が、私は好ましいとは思わない。このクラウド的発想は別に今始まったわけでもないし、「ウェブ進化論」では、「あちら側」と表現されていたものが、すこしづつ話題の中心になってきたということにすぎないと思う。
パソコンそのものや、ソフトにしたって、あるいは、インターネット自体の発展過程においても、最初はDIYのようなお手軽な身近な存在であるかのようなイメージがあるのだが、だんだんエスタブリッシュされることによって、私たち一般ユーザーからどんどん遠ざかっていくのは、いつもことだった。現在のネット社会が「クラウド」化していくのだとするなら、それはそれ、個人的には抵抗する気もないし、所詮そんなものだろう、と諦めの気分も湧いてくる。「私はもっと別なものを求めているんだ」などと、捨てゼリフをはいて、視点を他の方向へ転じていくだろう。ちょっといじけぎみではある。
昨今の金融破たんで不安はあるものの、自宅でお金をたんすなどにしまい、盗難や火事や地震にあうリスクと比較した場合、金融機関に預けておくほうが安全に管理されると考える人が多いだろう。金融機関に自分の金融資産を預けることが一般化しているのと同様に、実績があり信頼性の高いクラウド・コンピューティングのサービスを提供している事業者に、自社の情報資産の一部を預けるということも、この先、選択肢として増えていくのではないかと考えられる。p021
見る角度を変えれば私も金融業にも関わっていることになる。他人の金融資産に手をつけることはないが、個人情報にかかわる部分については、さまざまな形で漏洩する可能性があることも知っているし、場合によっては致命的な加工が施されることも充分知っている。資産の管理と、情報の管理は全く違う。この例え話には、私はまったく賛同できない。
それに私はアマチュアリズムを愛している。過剰に粉飾されたエスタブリッシュメントを愛する立場を取っていない。時代がそのように動いていくのなら、それはそれ、別に抵抗するつもりはない。しかし、自分がやるよりプロに依頼したほうがよい、とする分野からは限りなく逃走していくことにする。しかし、この世には、他人には絶対に頼れないなにか、プロに頼んでもどうにもならないもの、そういうものがあるはずなのであり、それをこそ探していきたいと思う。
たとえば健康は自分で管理したほうがよい、と思うかも知れない。なにもかもプロに管理されることはいやだ。たとえば、自らの精神を、プロに管理されるのも嫌だ。そして、死は、結局、自分の死は、自分で引き受けなくてはならない。
クラウド・コンピューティングから、いきなり飛躍した話になってしまったが、つまり、当ブログは、このような態度をとっているわけだから、科学やインターネットの話題や、IT話では終結できないのは自明のことなのだ。いやむしろ、このような話から、どのようにしたら離れていけるのか、そういうことをもう少し明らかにしていく必要があるのだろう。
オバマ新大統領が愛用していることでもよく知られているブラックベリーはすでに累計1000万台以上の販売実績があり、日本においても外資系企業を中心に採用されている。p145
オバマ陣営は選挙戦でYoutubeとクラウド・コンピューティングを活用したとも言われるが、この辺は、いずれそれはそれとして、もっと知りたいと思っている。
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コメント
>チダさん
Gmailも使っているし、他のサービスもいろいろと試しています。しかし、クラウド・コンピューティングという概念は、まだきちんと規定されていないけれど、一極化されることについては、あまり心地よくありません。あちこちに分散しておきたい方です。
1ユーザーとしてクラウドを利用していくようになるのだろうけれど、例えば経営者だとか、なにかのプロジェクトの推進者としては、すべてを他者にまかしてしまうというシステムは使わないでしょう。DIYや可変性を限りなく残しておきたいです。
投稿: Bhavesh | 2009/04/06 18:30
クラウド コンピューティングは詳しく知らないけど、GMailやYoutubeやMixiとかも、たしかその応用例だったよね?
企業が業務に関するほとんどすべてのコンピュータ処理をクラウドに任せるような場合は、本格的な使用例になるんだと思う → たぶんそうだよね。
個人にとっては、便利になっていいと思う。
Mail、インターネットブラウズ、Mixiなどのプライベートな日常の使用はHDDなしのネットブックでできてしまうようになるよ。
投稿: チダ | 2009/04/06 16:40