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2009/04/08

偉人たちの脳 文明の星時間


「偉人たちの脳」 文明の星時間
茂木健一郎 2009/03 毎日新聞社 単行本 235p
Vol.2 No.567 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆

 茂木健一郎という人物を積極的におっかけようという姿勢が出てこなければ、この「偉人たちの脳」というタイトルでは、ぜんぜんこの本を読む気にはなれないだろう。「偉人」たちというコンセプトが、当ブログにうまくフィットしてくれない。あるいは「脳」という物質化にも、いまいちシンパシーを感じることができない。

 ひと通り読み通したあとになっても、このタイトルがはたして適合しているのかどうか、疑問のままであった。本人が名付けたのであろうか、出版社の意図なのであろうか。

 私にとって身近な学問の世界でも、日本では分野横断的な研究テーマが認められない。探究している「脳科学」の分野についても、未だに「それは医学の一部ですか」などといった質問を受ける。医学はもちろん、生物学、情報科学、ネットワークサイエンス、認知科学、数理科学といったさまざまな分野が融合して生み出されつつある「脳科学」という新しい分野が、この国ではなかなかリアリティを持って受け入れられないらしい。p180

 この部分を読む限り、私の感覚は日本人としては一般的でもあるようである。著者は積極的に「脳科学」という言葉を使っているのだから、この本のタイトルも、きっと最終的には著者も気に入って名付けているのだろう、と推測する。

 本書は「サンデー毎日」に2008年一年間連載されたエッセイをまとめたものであり、白洲次郎からはじまり、アインシュタイン、ビートルズ、羽生善治、などについて書かれた、40のエッセイでできており、最後は、バラク・オバマで締めくくられている。

 誰でも「典型的なアメリカ人」。どんな背景の人でも、努力さえすれば、アメリカ合衆国大統領になることができる。それは長い間一つの理念にすぎなかったが、実際にそのようなことが可能であると私たちは知った。アメリカ建国の理想は生きていた。p229

 1962年生まれの著者は、私より9年、学年が下であるはずなのに、なんだか同級生が書いているような気になるところがある。かなり早熟な人であったのだろうか、と思ってみたのだが、実はそれはちょっと違うのではないか。たとえば、この人の本は、彼よりさらに10歳年下の人々が読んでも、共感し得るような視点が埋め込まれているのではないだろうか。

 あるいは、日本人という触れ込みではあるが、ひょっとすると、他のアジア人たちや、欧米の人々が読んでも、割と受け入れやすいものであるだろう。科学畑であろうと、文学畑であろうと、あるいは政治家や経済人であろうと、親近感を感じるような仕掛けがあるのではないか。それは彼のキャパシティの広さの証左でもあるだろうが、その「分野横断」的なスタイルが、おのずとそのようなイメージを周囲に作り上げるのであろう。

 高揚はやがて冷める。オバマ氏の前途は多難だろう。しかし、それで良い。受難こそが、情熱の母なのだから。
「私は典型的なアメリカ人です。」
 遠いあの日、私の心にさざ波を立てた言葉の背後にあった骨太の思想に、歳月の流れの中で再会した。そして今、私たち一人ひとりが、「典型的な地球人」としてそれぞれの個性ある生を過ごす。そんな未来を夢見ている。
p231

 この部分が、この本の結句である。素晴らしい。当ブログ「地球人スピリット・ジャーナル」も、この言葉をモットーとしようではないか。誰も偉人なんかじゃない。あるいは、みんな誰もが偉人だ。同じ地球人としてみんなイコールなのだ。それぞれに典型的な地球人なのだ。

私たち一人ひとりが、「典型的な地球人」としてそれぞれの個性ある生を過ごす。そんな未来を夢見ている。 茂木健一郎

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