かもめのジョナサン<1>
「かもめのジョナサン」 <1>
リチャード・バック /五木寛之 1977/05 新潮社 文庫 140p
Vol.2 No.587★★☆☆☆ ★★★★☆ ★★★★★
その騒ぎをよそに、カモメのジョナサン・リヴィングストンは、ただ一羽、船からも岸からも遠くはなれて、練習に夢中になっていた。p7
そもそもなぜに、ジョナサンは、群れから離れて、ひとり、自らの世界に旅立ってしまったのだろうか。
ジョナサンは、恥ずかしげもなく飛びあがると、またもや翼を例の震えるほどのきついカーヴにたもち、ゆっくりと速度をおとしてゆくのだった。おそく、さらにおそく---そして彼はふたたび失速し、海に落ちた。どう見てもこれは正気の沙汰ではない。p8
「人間に可能な進化の心理学」を探究することは、なかなか魅力的なことだ。というか、すでにこのテーマを当面の当ブログのメインテーマに据えることを決定した。そして、どうやら4やら7やらという数字がチラチラ見えてきた。しかし・・・・・。
カモメのジョナサンは、なぜ騒がしい群れを離れて、ひとり、新しい飛び方を練習をはじめるのだろう・・・。
「なぜなの、ジョン、一体どうして?」母親は息子にたずねた。
「なぜあんたは群れの皆さんと同じように振舞えないの? 低空飛行なんて、そんなことペリカンやアホウドリたちにまかせておいたらどう? それに、どうして餌を食べないの? あんたったら、まるで骨と羽根だけじゃないの」
「骨と羽根だけだって平気だよ、かあさん。ぼくは自分が空でやれる事はなにか、やれない事はなにかってことを知りたいだけなんだ。ただそれだけのことさ」 p10
なぜ? どうしてなのだろう・・? でもジョナサンにもうまく説明できない。「ただそれだけのことさ」。
ジョナサンは、その日からずっと、残された生涯をひとりで過ごすこととなった。だが、彼は流刑の場所、<遥かなる崖>にとどまらずに、さらにずっと遠くまで飛んでいった。彼のただひとつの悲しみは、孤独ではなく、輝かしい飛行への道が目前にひろがっているのに、そのことを仲間たちが信じようとしなかったことだ。彼らが目をつぶったまま、それを見ようとしなかったことだった。p40
どうして山を登るのか? そこに山があるからさ、と答えたのは、どこかの有名な登山家だった。うむ、人生、その一言で割り切れるのだろうか。
「ふるさとなどわたしにはない。仲間もいはしない。わたしは追放されたんだ。それにわれわれはいま、<聖なる山の風>の最も高いところに乗って飛んでいるが、わたしにはもうこれ以上数百メートルだってこの老いぼれた体を持ちあげることはできんのだよ」
「それができるのだ、ジョナサン。あなたは飛ぶことを学んだんじゃないか。この教程は終わったのだ。新しい教程にとりかかる時がきたのだよ」 p52
ひとつの教程が終わって、満足しているのに、存在は、なぜに、新たなる可能性への誘惑を働きかけるのか。進化は、どこまで可能なのか。
「よし、行こう」ついに彼は言った。
そして、ジョナサン・リビングストンは、星のように輝く二羽のカモメとともに高く昇ってゆき、やがて暗黒の空のかなたへと消えていった。p53
ジョナサンを、さらに、さらに掻き立てるものは何か。
「よいか、ジョナサン、お前が真に完全なるスピードに達しえた時には、お前はまさに天国にとどこうとしておるのだ。そして完全なるスピードというものは、時速数千キロで飛ぶことでも、百万キロで飛ぶことでも、また光の速さで飛ぶことでもない。なぜかといえば、どんなに数字が大きくなってもそこには限りがあるからだ。だが、完全なるものは、限界をもたぬ。完全なるスピードとは、よいか、それはすなわち、即そこに在(あ)るということなのだ」 p66
完全とはなにか。そこに在るとはなにか。
「まず、自分はすでにもうそこに到達しているのだ、ということを知ることから始めなくてはならぬ・・・・」 p75
師の言葉は厳しい。
「やったぞ!」
「そうとも、もちろんお前はやりおおせたのだよ、ジョン」チャンが言った。p78
師が認め、弟子は自らの達成を知る。
「ジョナサンよ」彼は言った。それが彼の最後の言葉だった。
「もっと他人を愛することを学ぶことだ。よいか」 p80
かもめのジョナサンの物語はここで終わるのだろうか。
フレッチャー・リンドは、まだとても若いカモメだった。だが、彼は群れの中で自分ほどひどい扱いをうけたり、極端に不公平な仕打ちをうけたカモメはほかにいないと思いこんでいた。p86
ジョナサン・リビングストンにつづく、若きフレッチャー・リンドがやって来る。
「フレッチャー、君は本当に飛びたいのか?」
「はい、飛びたいです!」 p88
青きジョナサン・リビングストンの後には、さらに青きフレッチャー・リンドが従った。そのあとには、きっと、青きウィルヘルム・ライヒや、青きP・D・ウスペンスキーが従うことだろう。マルチン・ブーバー、コリン・ウィルソン・・・・ その列は長い・・・・。
なぜに、可能な進化を求めて旅立つのか。
もうこの辺で、なぜ、を問うのはやめよう。答えはなさそうだ。ないのだ。
ただ、可能な進化、そのものが、旅を誘う。
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コメント
なんどもなんども、読みたくなりますね。
投稿: Bhavesh | 2011/07/08 08:18
自分以外を受け入れる事で、本当の自由を手に入れたジョナサン 素敵な物語ですね 大好きな小説です
投稿: やすこ | 2011/07/07 23:15