新しい宇宙像<5>
<4>よりつづく
「新しい宇宙像」(下巻)<5>
ピョ-トル・デミアノヴィチ・ウスペンスキー /高橋弘泰 2002/08 コスモス・ライブラリ- /星雲社 単行本 399p
存在の根本問題、つまり生と死の謎、存在の到来とその消滅の謎は、常に人間につきまとってきた。人が何について考えようと、結局はこの謎に行き着く。たとえこれらの問題に手をつけまいと決心しても、人はあらゆる機会をとらえて、もう一度この解決不可能な問題を解こうと試みてしまう。p276
この一文は、この分厚い一冊「新しい宇宙像」の最終段になって「第11章 永劫回帰とマヌ法典」の冒頭にでてくる文章である。この文章はまた、当ブログの「プロジェクトG・O・D」、不可知部分の、もっとも不可知な部分のINDEXに相当する文章でもある。ウスペンスキーは、この「解けない謎」をさらりと解いてみせるだろうか。
「(暫定)カビール達の心理学」フェーズ1
定義c:全ての謎は迷宮入りする。
定義g:(ないしょ)語られ得ないことがある。
これまで、暇にまかせて図書館をぶらぶらしながら、いくつかのフレーズにまとまりをつけようと、7つの素材をつくっておいた。これらはすこしづつステージをあげて、精製されていく必要がある。
定義c。全ての謎は迷宮入りする。この言葉は矛盾を大いに含んでいる。解ける謎は、謎と呼ばない、という前提が必要だ。解けてしまった謎は、既知であり、すでに謎とは呼ばれない。いずれ解かれるであろう謎は、未知であるが、いずれ説かれる運命にある。だから、それも謎と呼んでしまっていいのか、という疑問は残る。しかし、いまだ知られざるものでありながら、それを知ろうとしなければ、未知とさえ呼ばれない。
全ての謎は迷宮入りする。この定義はかなり無理がある。全ての謎、というところで、謎がたくさんあるかのような誤解を生んでしまう。実は、知ろうして、いずれ知られてしまう謎はたくさんある。いや、ほとんどが解けてしまうだろう。解けないで残る謎だけが、本来の意味で謎と呼ばれるべきだ。解けないで残ってしまう、最後の問いだけが、謎と呼ばれるべきなのだ。最後に残る謎。それこそが死の問題であろう。
ここは、最終の謎は迷宮入りする、とでも書きなおしたほうがいいだろう。いや、解けないで最終に残るものこそを謎とよぶべきなのだから、最後に迷宮入りするものだけを謎と呼ぶ、とでも書き換えたほうがいいのだろう。
定義g。(ないしょ)語られ得ないことがある。どうして、語られ得ない、と結論づけることができるのであろうか。語られ得ない、ということが分かるということは、図地反転してみれば、それは語られ得る、ということにならないだろうか。大体において、語る、とは何か。言葉にする、ということか。その存在や状況を理解できるけど、言葉にできない、ということか。それともその存在や状況も理解できない、ということか。
神という概念は、言葉に置き換えたり、形容できなくても、存在しているのだろうか。あるいは、その存在そのものがもともとないのだろうか。ニーチェが叫んだように、神は死んだのか。あるいはもともといなかったのか。小人物たちが生み出した、負の概念だったのか。
死という概念は、言葉に置き換えたり、形容できなくても、存在しているのだろうか。あるいは、その存在そのものがもともとないのだろうか。人間としてこの世に生まれた限り、あまねくすべての人間に死はやってくる、という考えは既知である。いずれ、この私、この身にもやってくるはずの死は、未知として、いずれ体験されるべき課題として取り置かれている。いったいにおいて、死は、小人物たちが生み出した、負の概念であると、言うことはできないのか。
永劫回帰、そして「過去への転生」という考え方は、「進化」という考え方とどう関係するのかという問題に関連して、秘教の中に何らかの社会理論は存在するのかどうかを知るのは興味深い。つまり秘教は、ある文化が最高の結果を得るのを助け、一般に人類の進化に役立つような社会組織の可能性を認めているのか、ということである。 p331
ウスペンスキーがここでマヌ法典を取り上げ、さらに、次章の12章「セックスと進化」で、死から生への転生の謎をさぐっているのは興味深い。この辺に、当ブログにおける「菩薩としてのウェブ」模索の手掛かりが落ちている可能性もある。
しかし何でもかんでも、古代から伝わる秘教を探ることに全精力を傾ける、という態度は、当ブログの態度ではない。示唆され、ヒントを得ることがあるとしても、すべての外在物のなかの既知なる回答をあてはめようとするのは、自らの探究を放棄したに等しい。のんびり行こうじゃないか。急いては事を仕損じる。
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