ウェブは菩薩である
「ウェブは菩薩である」 メタデータが世界を変える
深見嘉明 2008/07 NTT出版 単行本 218p
Vol.2 No.621★★★★★ ★★☆☆☆ ★★★☆☆
タイトルに惹かれて読んでみた。1976年生まれの電通リサーチ研究員。専門学者見習い中とでもいうのだろうか。巻末で指導教官よろしく國領二郎K大教授が「解説」している。まぁ、一度できた原稿を「まだかなりオタクで、狭い世界の話」p214になっていたので、いろいろアドバイスした、ということだろうか。
76年生まれといえば、33歳。むしろウェブ社会では主役を演じている年代であり、逆に50年配の國領を啓発すべき位置にさえあるように思うが、学者の世界は学者の世界なりに先輩の指導にしたがうものでもあるのだろう。
一人ひとりが本当に自分が好きなことを、自分のペースで行って、それが誰かの役に立つ。そうしたことが世界中で少しづつ積み重なって、みんなの日常が効率的になっていく。人々の活動が効率的になるということは、同じエネルギーでより多くの価値が生み出されるということ。そしてその果実はみんなが必要なときに必要なだけ利用することができます。無理な努力も、結果も平等に振り分ける必要もありません。すべての人が、自分の意思や感性に素直にしたがって活動することができるのです。将来、万人に御利益がもたらされます。まるで慈悲深い菩薩のようではありませんか。ウェブは一握りの(旧来型)エリートのためだけにあるわけではありません。万人の自由を拡大するというのがウェブの進化の本質です。p212
「菩薩」というキーワードで読み始めた本書ではあったが、菩薩理解がこの程度では、不合格です。ましてや、となりに「御利益」なんぞという単語を並べておいては、なりませぬ。菩薩とはボーディサットヴァのこと。悟りを一歩前にして、此岸に最後の最後の一歩を残しておいて、生きとし生けるものを救おうとする存在。優しいだけでもないし、万人にご利益を与えるだけの存在でもない。人々は彼が指し示す「悟り」=彼岸を真摯に探求する必要がある。真理を探究しようとしないのであれば、菩薩が菩薩として存在している意味がない。菩薩は使い捨てのティッシュペーパーのようなものではありません。
仮にこのオプティミズムが本書の本旨だとして、「ウェブ進化論」の梅田望夫などに比較しても、アマアマでユルユルすぎる論旨ではないだろうか。
筆者の「好きなこと」とは何かって? それは、このウェブ進化と、進化によって世界が変化していくそのダイナミズムを肌で感じ、捉えること、これに尽きます。だから、本書は「好きなこと」そのもの。つまりウェブの進化の産物なのです。p212
ふう・・・・。ユルユルですなぁ。「万人の自由を拡大するというのがウェブの進化の本質です。」とひとことで片づけてしまうことは簡単だが、では、万人とは誰? 万人の中のひとりの自分の立場から見えた人々のこと・・? それとも、北朝鮮の人々や、国境や人種問題でいまだに戦火のたえない地域の人々や、いまから死にゆかんとする「後期」高齢者や、冤罪によって長期に拘留されたりしている政治犯など、地球上のすべて70億人のことが含まれているのだろうか。
この本、タイトルは素晴らしく、100点どころか、200点つけてあげてもいいのだが、本としては月並みな凡庸なもので、目新しいものはない。この本のタイトルには「ウェブは煩悩である」とでもつけといたほうがいいのではないだろうか。
そして、このタイトル「ウェブは菩薩である」というフレーズは、当ブログで借り上げたい。ウェブは、「トゥリア」に向って人類の集合的超意識を引き上げていくための方便である。地球人スピリット・ジャーナルのキャッチフレーズにピッタリだ。
「(暫定)カビール達の心理学」
定義f:「(盗作)ウェブは菩薩である」
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