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2009/05/11

「場所」論

「場所」論
「『場所』論」 ウェブのリアリズム、地域のロマンチシズム
丸田一 2008/12 NTT出版 単行本 271p
Vol.2 No.613★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆

 前著「ウェブが創る新しい郷土」 では、「地域=郷土、ここに『ウェブ』が何をし得るのか」というのがテーマだったが、こちらでは、「ウェブの中に、どのように『地域=郷土』を求め得るのか」がテーマとなっている。

 音楽の要素は、メロディ、ハーモニー、リズムの三つである。その枠組みを借りれば、本書は、音の時間的な流れとして口ずさみやすいメロディではなく、音の響きとして空間に広がるハーモニーを主題とした。美しさの基準は時間によってまちまちだが、今求められているのは響きとは何かを考えてきたつもりである。「あとがき」p270

 このメロディ、ハーモニー、リズム、の例えは興味深い。後だしジャンケンだが、実は、私もこのことは考えていた。この三要素は、リズム=コンテナ、メロディ=コンテンツ、ハーモニー=コンシャスネス、として対応するのではないか、ということだった。楽器で言えば、ドラム、リードギター、キーボード、というところだろうか。これを例えば雅楽とかインド音楽にあてはめてみると、なかなか面白いのだ。

 この三つの要素がそろわなければ音楽にならない、というわけではないが、音楽全体を見渡した時、その要素をこの三つの方向に大分けすることができるだろう、ということだ。一要素だけでも音楽になり得るし、逆に三つそろうことのようが不自然、とも思える。

 リズムだけ、というキーワードで思い出すことがある。

 20前後の時、自分のアパートで痩せた布団にくるまって寝ようとしていた。風の強い夜だった。窓辺の外にかけておいた、洗濯物用のハンガーが、風に揺れて、ガラスを叩いた。それほど大きな音ではないが、カツン、カツンと、ガラスに触れた。ちょっと大きめなものだったから、振り子のように揺れていたのだろうか。

 眠れないまま、聞くともしないまま、耳にその音が届いていた。カツン、カツン、カツン、とその音が、かすかに、しかし、明らかに定則性をともなって聞こえてきていた。

 すこしづつ夢に領域に入ろうとした時、その音は次第に音量を上げたようにも思えた。ガツン、ガツン、ガツン、という振動音は、やがて、ドォン、ドォン、ドォン、と広がりはじめた。その定期的に聞こえてくるリズムは、大いなる催眠効果を働き、私は夢の領域におちた。 

 ジャンカ、ジャンカ、ジャンカ、ジャンカ、その音は、南米かアフリカ大陸の民族音楽のようなものとなって響き始めたのである。私は、そのリズム音ですっかり、いわゆる金縛りに入っていっていた。意識はあるけど体は動かない。耳に入ってくる音は、風に揺れるハンガーの音か、民族音楽かさだかではなくなっていた。ジャンカ、ジャンカ、ジャンカ、ジャンカ、私は夢の中で踊っていた。

 そんなことがあったから、リズムだけでも催眠性があることがわかるし、ましてや、笛ひとつのメロディ、アカペラだけのハーモニーさえ、素晴らしい音楽になり得る、ということはよく分かる。リズム、メロディ、ハーモニーがそろえば、これは本格的な音楽であると言えるだろう。

 本書においては、ハーモニーが主題となっており、当ブログにおいては、目下のおっかけはコンシャスネスとなっている。ハーモニーとコンシャスネスの、どこかに底通する類似性があるのではないか。そんな思いが強くなった。

 本文ではないが、後ろカバーをめくった最後のページに「叢書コムニス刊行の辞」として「編集を代表して 西垣通」の、たった一ページの文が掲載されている。西垣は、ネット社会の交番の署長さんか、防犯協会の会長さんのような素振りが目立つので、ちょっと苦手だが、その先駆的な視点には、学ぶべきところが多い。

 そこで<情報><メディア><コミュニケーション>が新たに問い直されることになる。これらはあまりに正攻法すぎるキーワードだろうか? いや、実はこれらこそ、あいまいなまま濫用され、薄っぺらなIT未来社会論やトンデモ本めいたハウツー本の洪水を生み出し、社会を混乱させている張本人なのだ。よく考えてみれば、これら三つの概念を明解に整理して説明することさえ、なかなか難しい。だからこそ、その根底を問い直し、鍛え直してていかなくてはならないのである。巻末

 この三つもなかなか興味深い。当ブログに引き寄せて考えれば、メディア=コンテナ、情報=コンテンツ、コミュニケーション=コンシャスネス、ということになろうか。三位一体で考えれば、いずれも外せない要素ではあるが、目下のところ、当ブログにおいては、ここでいうところのコミュニケーション=コンシャスネスが、メインのテーマということになる。

 つまり、本書におけるさまざまな考察はていねいに拝聴するとして、当ブログとしては、コミュニケーション=ハーモニー=コンシャスネス、という要素をもうすこし探求すべきなのだ、ということを確認できれば、この本から何事かを学んだ、ということになるだろう。

 三つの要素がそれぞれに独立しながら絡み合い、何事かの状況を生み出すとき、その状況を浮かび上がらせている「場所」とはなにか。命題は、螺旋階段のように昇りはじめる。

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