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2009/05/21

ナレッジサイエンス

ナレッジサイエンス改訂増補版
「ナレッジサイエンス」 改訂増補版 知を再編する81のキーワード
杉山公造 /北陸先端科学技術大学院大学 2008/03 近代科学社 サイズ: 単行本 ページ数: 313p
Vol.2 No.634★★★★★ ★★★★☆ ★★★★☆

 元本が2002/12発行だから、全体的なフレームがどことなく古びて感じることはやむを得ない。しかし、元本が「64」のキーワードだったのに、こちらの改訂増補版は「81」のキーワードとなっており、大幅に手が加えられていることは間違いない。

 2002年の段階でも、この元本を目にする機会があったのだろうが、読み手としてのこちらの側にやや偏見があり、当時ではあまり素直にこの本に手を伸ばそうという気分にはならなかったのではないだろうか。

 文中に挟まれている「知のダイナミックをめぐる8冊」など、40冊の本のブックガイドもついているが、日進月歩ならぬドッグ・イヤーがまかり通るIT社会のIT分野につき、ちょっと古めの本が並んでいることにやや惜しいものを感じる。逆にいえば、日々の波に洗われて、それでも残った宝珠の数々ということにもなるだろうが、機会があれば、このブックリストを追っかけてみる価値はありそう。

 「知を再編する」と標榜する本書だが、その81のキーワードをつらつらと眺めていくと、門外漢なる当ブログとしては、どうも同義反復のような部分も感じないわけではない。あれとこれとでは、どう違うのか、これとあれは一緒にできるのではないか。そう考え始まると、当ブログなら、これのキーワードを10分の1ほどに縮めてしまいそうだ。

 だが、それぞれのキーワードには、その出てくる経緯があるのだろうし、取り組み方が違えば、おのずとネーミングの仕方も違うのだろうから、門外漢がいちいち文句をつけるべき筋合いのものでもない。むしろ、収縮過程と拡大過程があるとするなら、ちょうどこのくらいの項目立てが適当と編集者たちは考えたのだろう。専門家なら、ここからさらに100倍もの項目を再分化させていくに違いない。

 逆に言えば、最近「菩薩としてのウェブ」という新たなキーワードを見つけた当ブログとしては、ものごとをいわゆる科学やITレベルではなくて、もっと人間の死を含む、意識レベルまで拡大して欲しかったな、と思うが、それはないものねだりと言うものだろう。

 人間以外の自然界に「知」が存在するとすれば、たとえば数十億年という時間の中で淘汰と進化を重ねてきた遺伝子のような、いわば「無意識の知」であろう。しかし、人間の知識は、意識あるいは思考と切り離せない。生命の起源と同時に自然界に個体の内部世界と外界という区別が生じ、個体の内部世界が外界との間に何らかの齟齬そ生じたとき、それを解消するために外界に働きかけ、外界を変化させると同時に個体自身も変化してきたのが生命の進化の歴史であると言える。生命界の進化の過程に人間が登場するに至って、個体としての自分と外界としての対象的自然の間に生じる齟齬を「問題」としてとらえ、それを解決するために思考を働かせるようになった。そこに主観的な視点からも客観的な意味でも「主体」という存在が生まれ、「意識」が登場したと考えられる。野口尚孝136p「人間の知識の土台を支える『ものづくりの知』」

 この本自体が、北陸先端科学技術大学院大学というところの監修になっていることを考えれば、話の展開がだんだんと「もの」のほうになっていくのはしかたないとしても、当ブログとしては、この辺あたりに「菩薩としてのウェブ」へのインターフェイスを見つけていくことになる。もしこの本が左脳的な「知の再編」なら、右脳的な「意識の再編」は、一体どこまで進んでいるのか、その辺あたりが、かなり気になる当ブログではある。 

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