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2009/05/18

コーラン

コーラン(上)改版 コーラン(中)改版 コーラン(下)改版

「コーラン」(上)  (中)  (下)  
井筒俊彦 2009/04 岩波書店 文庫 368p 369p 398p
Vol.2 No.627~9★☆☆☆☆ ★★★★☆ ★★★☆☆

 11番目。このシリーズの最後は、ハズラット・モハメッドの「コーラン」だ。「コーラン」は、読むべき本ではなく、歌うべき本だ。読んだら、それを逃すことになる。歌ったら、もし神が望むなら、それを見いだすかも知れない。

 「コーラン」は、学者や哲学者によって書かれたわけではない。モハメッドは、完全な文盲だった。彼は自分の名前すらかけなかった。だがモハメッドは神の霊に乗っ取られた。純真無垢ゆえ彼は選ばれ、そして歌い始めた。その歌が「コーラン」だ。

 私にはアラビア語がわからない。だが「コーラン」は理解できる。なぜなら、私にはそのリズムが、そのリズムの美しさが、アラビア語の音の美しさが分かるからだ。意味など誰が気にする? 花を見て、「それはどういう意味か?」と尋ねるかね? 花は花で充分だ。炎を見て「これは何を意味するのか?」と尋ねるだろうか? 炎は炎で十分だ。その美しさがその意味だ。リズムがあれば、その無意味さそのものが深い意味を持つ。

 「コーラン」がそれだ。そして私は、ありがたいことに神に許されて・・・・いいかね、神はいない、これは表現にすぎない。私を許している者など誰もいない。インシャラー、ありがたいことに、私はこのシリーズを「コーラン」で終えることができる。人類の全歴史の中で最も美しい、最も無意味な、最も意味深い、しかもなお、もっとも非論理的な本で終えることができる。Osho「私が愛した本」p66

 Oshoあるいはその周辺は、このシリーズを最初は50冊で終了する予定であったようだ。そして、その尻んがりをしっかりと「コーラン」で、一回締めてしまったのだった。「ツラトウストラ」から始まって「コーラン」で終わる。これはこれでコンパクトな円環をイメージできる。しかし、最終的には「信心銘」から始まってアラン・ワッツの「本」への大きな外環状の168冊に拡大してしまうのだが、やはり、「コーラン」は内環状の中にはいらざるを得ない一冊と言えるだろう。

 ましてや、当ブログにおいてもスーフィーのファキールやダルビッシュたちを追っかけていくなら、彼らがどのように扱い、あるいは彼ら自身がそれによってどのように扱われたとしても、「コーラン」には一度目を通しておかなければならない。

 とはいうものの、翻訳者も言っているとおり、コーランを文字にし、あるいは現代日本語の口語体に移し替えるという作業は無謀な行為ではあるようだ。ほとんど不可能であり、また、翻訳されたものはまったく別ものである、とさえ断言している。さらにまた、アラビア語という言語体系は、ほんのちょっとの表記のしかたで、まったく意味の反対になってしまう場合があり、解釈のされかたはさまざまあるようだ。

 時に、なんとか原理主義とかいう単語が飛び出すが、幾通りの解釈が存在し、また、あらゆる理解が可能であるコーランから、「原理」を引き出すことなど不可能にさえ感じる。もし「原理」があるとすれば、自らの解釈を固定的なものと考えて、他の解釈の自由を許さない、という頑固さ、その頑迷さこそが原理を生んでしまうのだろう。 

 世界三大宗教と呼ばれる、仏教、キリスト教、イスラム教の中ではもっと縁遠く、ましてや「コーラン」など理解不能だと、最初っからあきらめがちだが、この文庫本3冊にまとめられたコーランは、割ととっつきやすい。ものごとの本質に到達しえないまでも、コーランとはこういう仕組みになっているのか、こういう世界のことが書かれているのか、というイメージは湧いてくる。

 小説ぎらいを標榜する当ブログではあるが、不謹慎ながら、この3冊を小説ごときのように一読してみるのも悪くないな、と感じる。ざっと眼を通したかぎり、マホメッドという人間の存在感にも触れることができるし、その歴史的な周辺地域との関わりなどにも、関心が湧いてくる。

 今年2009年4月に、この文庫本の「改版」がでているようだが、当ブログでは1998~9年にでた旧本を読んだ。訳者の解説もなかなか興味深く、新しい改版では、なにか新しい記述がプラスされているかもしれない。

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