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2009/06/17

グルジェフから40年

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「グルジェフから40年」 ワーク実践のためのガイド
ジョン・フックス /槇野康史訳  浅井 雅志監修 2002/08 アトリエHB 単行本 144p
No.663★★☆☆☆ ★★★★☆ ★★★☆☆

 当ブログとしては、すでに「グルジェフとウスペンスキーの関連本リスト」の20数冊をもって、一連の本は読了としておいたのだが、まだ3冊が未読だった。近隣の図書館にない、というだけではなく、残り3冊は、どこかマイナーであり、各論的なところがある。深追いはしない、という当ブログの姿勢により、もう読まなくてもいいだろう、と決断しかかっていた。

 しかし、この世に存在するのに手にとっていない、というのも何とも不安定なものだから、とりあえず、この3冊の所在を確かめるためのリクエストを図書館にしておいた。すでに数カ月前のことであったので、忘れかけていた。

 にもかかわらず、この「グルジェフから40年」とともに、「グルジェフを求めて」「回想のグルジェフ」の3冊が一挙に届いたのである。驚くやら、有難いやら、うれしいの一言につきる。いつもながら、図書館のスタッフとそのネットワークに対する感謝の念でいっぱいだ。とくに今回は、1000キロも離れた図書館から一挙にまとめて転送されてきた。この地域においては、グルジェフのファンが充実した読書活動を行っているのだろうか。あらためて認識した。

 3冊の中では、この「グルジェフから40年」が一番マイナーな造本の1冊となっている。イーデン・ウェスト・キョウトを主宰し、「グルジェフ伝」の翻訳者でもある浅井雅志が監修をしているが、発行元はアトリエHBというところ。造本もいたって簡素で、質素というべきか。

 章立ても23章にわたっており、「内面の変容」から最終章の「瞑想」まで、それぞれのテーマについて簡潔なコメントがついており、本書の外観は極めてわかりやすい。わかりやすいがゆえに、もともと深遠なイメージのあるグルジェフ&ウスペンスキーの世界が、すこし薄められている感がしないでもない。しかし、本当は濃厚な内容だ。

 もともとは、グルジェフ・ワークを深く学ぶ人々のためのサブテキスト的な存在なのであろうから、具体的なエクササイズやワークなしに、この本1冊を取り出して評価すべきものではないようだ。

 原書についての記述がないのでいつ発行されたものであるのか明確ではないが、著者によるコメントが1988年まで続いているので、この直後に発行されたものであると考えられる。タイトルの「グルジェフから40年」というベタなコピーは、決しておしゃれとは言えないが、実際にワークにかかわった人々においては、深く感動的な意味合いが込められていることだろう。

 第21章 怠惰
 かつてグループの一人ひとりに、「あなたにはどんな弱点があるだろう?」と尋ねてみたことがある。大多数が口にしたのが怠惰だった。ある者はそれを自分の主要な特徴と認めたが、実はこれは私たちすべての生に見られる一つの要因なのだ。私は怠惰とはいったい何なのかじっくり調べたいと思った。その源はどこにあるのだろう? どんな風に現れるのだろう? どう対処できるのだろう?
 p115

 「怠惰」の語源がどのようなものかわからないが、広い世間のどこかには、自らを「怠惰」な者のための存在だ、と主張してやまないマスターも存在している(笑)。 意識をたぐりよせるワークにはさまざまなメソッドがあれど、あちこちごちゃまぜにしてしまうと大変危険なことも多い。自らの道を選び取るうえで、大変重要で難しい問題点である。

 原液に近いゆえに、「混ぜるな危険」の表示をしておく必要がある一冊。

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