グルジェフを求めて
「グルジェフを求めて」 〈第四の道〉をめぐる狂騒
ウィリアム・パトリック・パタ-ソン /古川順弘 2003/02 コスモス・ライブラリ- /星雲社 単行本 185p
No.664★★☆☆☆ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆
この本もそうだが、今回届いた3冊とも、2000年代初頭の発行である。日本におけるグルジェフ・ブーム(?)は、1980年代初頭にはじまって、90年代に熟成されつつ、2000年代になって、ようやく本格化してきたのだろうか、とさえ思う。
著者については4~50歳代のアメリカのジャーナリストというだけで、詳細は知らない。原書が1998年にでているので、欧米においても、さかんにこのようなグルジェフ関連の書物が出版され続けているのだろう。日本においては、大野純一率いるコスモス・ライブラリーという出版社がこの手の本の流通に大きな貢献をしているようだ。
本書は、サブタイトルの「狂騒」から類推できるように、グルジェフ、あるいはグルジェフ的なものを巡っての、真贋論争である。
第1章 エニアグラムはいかにして市場に現れたか
第2章 <しおり>の人々
第3章 ムラヴィエフ<現象> 目次より
本書は大きくこの3つのターマで終結している。第1章のエニアグラムの性格論については「グルジェフ・ワークの実際」や「エニアグラム(基礎編)」などもめくってみたが、いまいち納得感がない。エニアグラムを市場に「流通」させようとする潮流には、欧米の軽薄な神秘遊戯趣味が一役買っているようだ。
そのしおりには、<グルジェフ・ウスペンスキー・センター>の電話番号とともに、グルジェフとウスペンスキーの肖像が神秘的に描かれていた。弟子たちは定期的に書店や図書館を廻り、このしおりを<第4の道>関連のあらゆる書物に挟み込むように指示された。---かくて、「<しおり>の人々」という名称が生じたのだ。何も知らない読者なら、当然、このしおりと、それが挟んであった書物との間に、何らかのつながりがあると思うはずだ。この策略にはまって、8000人もの探究者が、広告の電話番号に掛けることによって、<教え>を「見つけ出した」わけだ。p59
第2章では、ロバート・アール・バートンによって設立された<友愛団>を、<しおり>の人々、として著者は激しく糾弾するわけだが、もっともという気もする。さまざまなグループが、さまさまな仲間集め方法を編み出すものだが、この手のやり方はありそうだ。
第3章においては、性格論や<しおり>とはまた次元が違う形で、ボリス・ムラヴィエフを論じている。ムラヴィエフはグルジェフとも出会っているが、その教えには従わず、ウスペンスキーの友人という立場で、その出版活動を助けながら、つねにグルジェフには批判的な立場を保ったようだ。当ブログにおいては、いままでの読書の中でも、この名前に出会ったのかもしれないが、各論的なゴシップなどにはあまり注視しないできた。
この本を最初に読む人はいないだろうが、いくつかの主要な書物を読んだあとなら、この本の価値もでてくるだろう。本来のグルジェフ・ワークに立ち帰れ、という主張はもっともであろう。しかしながら、インターネットの普及したこの21世紀の現代に生きる「探究者」であるならば、100年前のグルジェフの足跡を有難がって復古することよりも、もっと別な角度でもって、軌道修正する方法があるのではないだろうか、といぶかしくなる。
著者はもともと、こういう議論における、このような立場がお好きな人物なのであろう。
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