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2009/07/19

化粧する脳<2>

<1>よりつづく

化粧する脳
「化粧する脳
 <2>
茂木健一郎 2009/03  集英社 新書  189p

 この本もすでに立ち読みして、大体のイメージはつかめているが、図書館で新たに見つけたので、再読もありかな、と思って借りてきた。しかし、立ち読みしたときと読む速度はほとんど変わらず、敢えていえば、転記する余裕があるかないかの違いだけであった。

 他人が自分をどう見ているかということが、「私とは何か」という「自我」の成り立ちに重大な影響を与えざるを得ない。p3

 「私とは何か」という問いかけは、やはり「私とは誰か」という言葉に言いなおされたほうがいいと思う。そして、それを「他人がどう見ているか」という問いかけにしてしまっては、出てくる結論はまったく別次元のものになってしまうだろう。

 「何か」と問うた時には、すでに「私」は外在的な「物」化している。外在物となり果てた「私」には、どのような「化粧」がほどこされたとしても、それは「私」に到達する道からは、大きく外れていく。

 「私は誰か」と問う時、それは「他人」が問うから問うのではない。「私」が問うのである。「私」が「私は誰か」と問うのである。「私」が問うとき、「私」は「物」であるはずがない。「私」は「存在」なのである。問いかけとしては、やはり「私は誰か」が正しい。

 この最初の問いかけ自体が間違っていれば、あとは、どのように新書本一冊が「化粧」されようと、それはすべて外面だ。「私」には到達しない。一大ブームを起こし得るような健筆化にしてみれば、あとは、新書本一冊をつくることなど、お茶の子さいさいだ。私はこのような本は、曲学阿世という表現が正しいと思う。

 2007年7月から、カネボウ化粧品と共同で、脳科学的な知見から、「美の本質」や「化粧の本質」について研究をしてきた。p42

 なにをもって「研究」というのかはさだかではないが、あまり奥深いものを感じない。そもそも、その研究期間が短すぎる。「研究」とは名ばかりの、産学協同のメディア・ミックス・マーケティングの一環にすぎないのではないか。茂木側としては、経済的バックアップを受けることができるだろうし、カネボウ側としては、飛ぶ鳥を落とす勢いの茂木人気に便乗することができる。意地悪く考えれば、そういうことになろう。

 情報テクノロジーの発展によって、インターネットの網の目は地球を覆いつくし、それは隈無く個人まで接続されようとしている。Googleのストリートビューによって、自宅の目の前の画像までクリック一つで世界中のだれでも見られるようになってしまった。p122

 この本の主テーマではないところではあろうが、著者はいきおいで、とにかく読者をうなづかせようとして、無理を重ねている。インターネットの網の目は地球を覆いつくしてはいないだろう。まだだ。ストリートビューで見れないところはたくさんある。いや、その方が圧倒的に多い。日本の中心を外れた地域、閑散とした地域は見れない。中国の奥地も観れない。チベットも北朝鮮も見れない。アフリカも、南米も見れない。「科学者」の表現としては大袈裟すぎる。

 それにたとえば、私の住まいも確かにストリート・ビューで見ることはできるが、所詮、ある一日のあるヒトこまでしかない。隣の家はたしかに洗濯ものをベランダに出しているが、毎日がそうであるわけではない。たまたまグーグルのカメラ車が通った日がそうだったにすぎない。毎日、隣の家を見ている私には、ストリート・ビューが見た隣家が、普遍的な真実をもっているとは思えない。ましてや、あの画像から「個人」など見れない。

 現在、多くの女性が毎朝化粧を施している。鏡に向かって長い時間自分を見つめ、化粧を施すプロセスが、化粧をする主体においてどのような意味があるのか考えることは、非常に興味深い。141p 恩蔵絢子 「鏡や化粧を通した自己認知」

 たしかに、私にとっても、電車のなかや、運転中の車の信号待ち中で、化粧鏡を覗き込んでいる女性心理は興味深い。しかし、そこからは、私の思索は深まらない。思いなおせば、人前で鼻毛を引き抜いては、いつも奥さんにこっぴどく注意されている、私の行為と繋がるものかもしれない。だが、むずむずっときたプロセスが、さっと鼻毛を引き抜く主体においてどのような意味があるのか、を考えることには、今のところ、わたしには興味がない。

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