死ななくてすむ人間関係の作り方
「死ななくてすむ人間関係の作り方」 無理しないで生きるための心理学
諸富祥彦 2009/07 アスペクト 単行本 200p
Vol.2 No755★★★☆☆ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆
著者の本は、
「フランクル心理学入門」 1997/04
「<むなしさ>の心理学」 1997/09
「<宮台真司>をぶっとばせ!」 1999/1
「トランスパーソナル心理学入門」 1999/08
「トランスパーソナル心理療法入門」 2001/7
「さみしい男」 2002/07
「子どもよりも親が怖い」 2002/10
「人生に意味はあるか」 2005/05
「死ななくてすむ人間関係の作り方」 2009/07
などを読んできたので、積極的に著者を読み込んできたように錯覚していたが、よくよく見てみれば、その91冊の著書のうち、目を通したは、ごくごくわずか、1割にも満たないものだった。決して面白くないわけではないのだが、とことん追っかける気になれなかったのは、本質的なものを含んでいるようにも思うだが、どことなく薄味なところが、読書としてはちょっと歯ごたえがなさすぎる、と感じたからだろうか。
1963年生まれ。時代体験が私より一回り下だ。カウンセリングと言ったり、トランスパーソナルと言ったりするが、いまいち食い込みの角度が違う。教育家向けに書かれた本も多いので、そうなると、当ブログからはどんどん距離ができていく。
同じ日本におけるトランスパーソナル紹介でも、 吉福伸逸ほど思い込みがひどくもなく、安藤治ほど医学の方向へ偏ってもいない。かなりとっつきやすい存在ではあるのだが、どこか器用すぎて、なんとなく口の巧みな浮気な男のイメージがなくもない。
そう考えると、オタクの人たちはすばらしい。彼らは周囲にどう思われようとおかまいなく、自分の好きなことに没頭して毎日を過ごしています。だいたい単独行動ですが、幸せそうです。オタクの人で「死にたい」と言う人に、私は会ったことがありません。
人からどう思われてもかまわない。自分さえ楽しければいい。そう思えれば、人は死のうとはしないものです。p44
死が悪であって、自殺は最悪、という立場を、当ブログは取らない。「死にたい」という思いを持つことをマイナスとは考えない。むしろ、「死」を考えない人は、どこか一味足らないようにさえ感じる。
著者の言葉の部分だけを切り取って、コメントを加えることは、ちょっとフェアではないのだが、それでも、全体的に目を通したときに、本質的で現実的で、多くの読者を獲得していそうな存在ではあるのだが、どこか、まったく決定的にごまかされているような気がする。
それはなぜか。著者は、読者を説得しよう、としているからである。たくさんの可能性があるよ、と言いつつ、そういう意見を押し付けてくるような感じがする。可能性を提示しつつも、それについてクライエントがどう思うのか、どう考えるのかを、引き出すことには積極的ではない。すくなくとも、本における著者の口ぶりは説得口調だ。いわゆるセールマンだ。
多くの方とカウンセリングを通して感じるのは、日本社会は”大きな物語”を喪失してしまった。日本国民の多くはどこを目指していいのか途方に暮れ、とまどっているのだということです。p180
危ない、危ない。こういう口調は、まんまとひっかけるための導入部であったりする。
少し前にSMAPが歌ってヒットした歌に「ナンバーワンでなくてもいい。君はオンリーワンなんだから」という意味の歌詞がありましたが、あれだってよく聴いてみると「オンリーワンでいいけれど、みんな前向きで、希望を持って生きなくちゃいけない」ということです。そんな画一的なボジティブさを押し付けているように思われて、なんだかそこに、とても違和感を感じるんです。p98
「世界に一つだけの花」のなかに「君はオンリーワンなんだから」という歌詞があっただろうか。「僕ら」という一人称はあったと思うが、「君」という二人称はなかったと思う。実は、著者に感じる違和感はここにあった。「そんな画一的なボジティブさを押し付けているように思われて、なんだかそこに、とても違和感を感じるんです。」というコメントは、むしろ、当ブログから著者に対して贈りたいコメントだ。
著者は「君」に語りすぎる。「僕ら」や「私」に語ったとしても、「君たち」視線を意識しすぎている。そこが、この本を読んでいて感じるキュークツさだし、ひょっとすると、著者自身が自らに感じている違和感なのではないか、と察する。
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