金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか
「金融大狂乱」 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか
ローレンス・G.マクドナルド /パトリック・ロビンソン 2009/09 徳間書店 単行本 399p
Vol.2 No798 ★★☆☆☆ ★★☆☆☆ ★☆☆☆☆
どのような名門企業であろうと、どのような歴史と栄光に輝く企業であろうと、リーマン・ブラザーズという企業が日本にニュースになった時には、すでに汚濁にまみれたペテン企業になっていたのではないか。すくなくとも、どのような経済アナリストたちが誉めたたえようと、一般的な日本人から見れば、眉唾な企業であったはずである。
その後、サブプライマルローン債権の販売にかかわる一連の出来事で見事に破滅した。その経過はすでに広く報道されているところであり、巨視的な見方をすれば、ただそれだけのことであったに過ぎない。
この本においては、内部にいた人間が、より詳しく記録しているだけであり、その「ストーリー性」に大きな違いはない。しかし、この本をめくっていて思うのは、ひとつの出来事に対して、あまりにストーリー性を求め過ぎているのではないか、ということだ。
本来できごとのひとつひとつには、なんの物語性はない。ただ事実が事実としてあり、物事が時系列に起き続けているだけであり、恣意的にそこにストーリー性を求めなければ、膨大な事実関係のデータが残るだけである。
にもかかわらず、その中から特定のストーリーを創りだすというのは、あまりにアメリカ流のエンターテイメント過ぎるのではないか、と感じる。ましてやこのような「事件」をまるでエンターテイメントとして楽しむような姿勢には、共感しえない。少なくとも、この本から一体、何を学べというのだろうか。
この本を読んだだけでは「なぜ暴走したのか」という正しい解答はでてこない。もともとが暴走することになっていた、としかいいようがない。つまりこの本からは「再発」を防ぐ手立てなど思いもつかない。つまり企業形態がそもそもそのような特質があるのであり、そもそもがいずれは姿を消さなければならない運命にあったのである。
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