はじめて出会う平和学―未来はここからはじまる
「はじめて出会う平和学」 未来はここからはじまる
児玉 克哉 (著), 中西 久枝 (著), 佐藤 安信 (著) 2004/12 有斐閣 単行本: 300p
Vol.2 No794 ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★
執筆陣は違うが、内容的には「新・平和学の現在」とほぼ同じ。かたや現状のレポート的であるのに比して、こちらは、よりカリキュラム的である、と言ったらいいだろうか。この本の著者たちは、1959年生まれ、1957年生まれ、1958年生まれと、若い。少なくとも、「戦争を知らない子どもたち」の世代であり、第二次世界大戦を体験していないし、もちろん、直接的な戦争責任はなさそうだ。
しかし、彼らは「平和学」を自らのメインのライフワークとして位置づけ、真正面から取り組んでいる。
平和学は、学問のための学問ではなく、希望を創るための学問であるべきである。この意味において、平和学の実践性は、平和学が平和学であるための重要なポイントである。p9「平和学を学ぼう」
本書は、いかにもカリキュラムらしく、各章のあとに演習問題がついている。興味深いので抜き書きしておく。
第1章 演習問題 p32
1)ナチス・ドイツがユダヤ人を大量虐殺した理由について考えてみよう。いったい何があの大虐殺を生んだのだろうか。
2)ラウル・ワレンバーグ、杉浦千畝、コルベ神父の生き方についてさらに詳しくしらべてみよう。
3)人権擁護の国際NGOにはどのようなものがあり、どういった活動をしているか調べてみよう。
第2章 演習問題 p53
1)アメリカがヒロシマとナガサキに原爆を投下した理由は何であろうか。考えられるものを挙げて、どれが本当に重要であったかを議論しよう。
2)広島・ナガサキでの被爆以外での核による被爆者にはどのような人がいるのか、調べてみよう。またそうした被爆者の現状についても調べ、考えてみよう。
3)広島と長崎への原爆投下以降約60年ものあいだ、核爆弾は実際には使用されなかった。なぜ使用されなかったと思うか。
第3章 演習問題 p71
1)日本はなぜアジアの国を侵略したのか。どうしたら避けられたと思うか。
2)冷戦時と冷戦後の武力紛争の特徴を比較しよう。
3)世界の紛争に対して国連はどのような役割を演じてきたか、冷戦時と冷戦後で違いがあるか、具体的に調べてみよう。
第4章 演習問題 p88
1)ガルトゥングのいう構造的暴力にはどのようなものが含まれるだろうか。考えられるものを挙げてみよう。
2)冷戦時代における資本主義世界での「中枢」国と「衛星」国、社会主義世界における「中枢」国と「衛星」国について具体的に挙げたうえで、それらの役割について考えてみよう。
3)平和学とエコロジー(環境学)、フェミニズム(女性解放学)との類似点を考察してみよう。
第5章 演習 p108
1)南北問題が紛争の構造的要因の1つとされる。なぜ南北問題が発生するのか。どうしたら解決できるだろうか。
2)紛争と開発は相互に関係しているといわれる。具体的事例を調べてみよう。
3)人間の安全保障論は人間中心の開発論を基礎に生まれたとされる。人間の安全都は具体的にどのようなことなのか考えてみよう。
第6章 演習問題 p126
1)日常生活にどのようなジェンダー差別があるか。またそれらは、戦時中、戦争後にどのような強化されるか。
2)女性のエンパワーメントは、なぜ紛争防止になるのか。本章にでてくる以外の事例を調べなさい。
3)紛争後の社会が復興し、平和な社会に移行するためには、どのような社会のしくみがつくられるべきか、日本の戦後復興を例に、そのメカニズムを分析してみよう。
第7章 演習問題 p145
1)外国人にも参政権のある国はどれだけあるだろうか。また日本における参政権議論は現在どういう状態にあるのだろうか。
2)日本で生活している外国人にはどういう国籍の人がいるか調べてみよう。
3)外国人が多くなるとよくなる点はどういうことが考えられるだろうか。単一的民族国家といわれた日本が多民族化していく意義について考えてみよう。
第8章 演習問題 p165
1)難民を保護する国際的なしくみはどのようなものであるか、その意義と限界は何か。
2)日本の難民保護政策にはどのような問題があるか調べてみよう。
3)難民問題を解決するにはどうしたらよいか、身近なことでできることはないか考えてみよう。
第9章 演習問題 p184
1)日本における酸性雨の被害はどの程度になっているのだろうか、現状をしらべてみよう。
2)日本の風力発電の現状を調べ、今後の可能性について考察してみよう。
3)国際的な環境保護NGOにはどのようなものがあるかを調べてみよう。日本にある環境保護NGOについてもどのような活動をしているか調べてみよう。
第10章 演習問題 p207
1)日本が抱える国境問題、つまり北方領土、竹島、尖閣列島について調べてみよう。日本政府と相手政府との主張の相違はどこにあるのか。
2)カシミール問題の歴史的な背景について調べてみよう。
3)日本の専守防衛政策とはどういうものか。歴史的背景や現在の意義と問題点について議論しよう。
第11章 演習問題 p225
1)現在の紛争や戦争の特色は何か。それらは、冷戦時代の紛争や戦争とどう違うのか。
2)アフガニスタンの復興への道は、何が条件になると考えられるか。また、その条件はどのようにしてつくりうるか。
3)パレスチナ問題は、なぜ解決が困難なのか。アメリカの中東政策が冷戦期、冷戦後どのように変わったか、また何が変わらなかったのか、調べてみよう。
第12章 演習問題 p244
1)PKOはどのような背景ではじまったのか。その意義と限界を考えてみよう。
2)国連の抱える過大はどのようなものであるか。どういう解決がありうるだろうか。
3)国際機関における日本の役割を具体的に検討してみよう。
第13章 演習問題 p259
1)日本に事務局を置く国際NGOのなかで、国連と協議資格を持つものには何があるだろうか。
2)オタワ・プロセスで重要な働きをした国際NGOの地雷禁止国キャンペーンについてさらに詳しく調べてみよう。どのような活動をしたのだろうか。どのような人が入っていたのだろうか。
3)インターネットが地球的なレベルでの市民活動に与える影響について考えてみよう。どういう変化が起きているだろうか。今後どういうことができると思うか。
終章 演習問題 p277
1)日本にある平和ミュージアムにはどのようなものがあるだろうか。どこにあり、どのような展示や活動をしているのだろうか、
2)日本でのNGOが提供しているスタディツアーにはどのようなものがあるだろうか。どのようなプログラムが組まれていて、どのくらい費用がかかるかなどについても調べてみよう。
3)参加型学習の問題点や課題は何だろうか。困難さや欠点などを挙げてみよう。また、どのようにそれらを克服することが考えられるだろうか。
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