世代間連帯 上野千鶴子 /辻元清美
「世代間連帯」
上野千鶴子 /辻元清美 2009/07 岩波書店 新書 246p
Vol.2 No779 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
「ソーリ、ソーリ!」や「あんたは疑惑の総合デパート」発言で話題を提供した辻本清美も、いまや国土交通副大臣。与党内閣の一角を占め、八ッ場ダムやJAL、高速道路公団問題に揺れるコンクリート行政を、内から改革する立場となっている。社民党は連立与党であるだけに、来年の参議院選挙まで、というひややかな見方があるなかで、少しでも存在感を示せるかどうか、今後の動向に注目していたい。
この本がでたのは今年の7月。実質的には、その数カ月前の発言が収録されていることになるだろうから、9月の政権交代劇の前に言いたい放題語っているということか。成り行き上、民主党マニュアルとは整合性がとれない文面も多々あるが、目いっぱい自民党政権に対する批判的な言辞を並べている。
辻本 男が一人で月収35万円から40万円稼いで、たくさんの制度的優遇をつけられた「専業主婦」と子ども2人を支える。この政府の考えてきた「家族モデル」を維持し続けるためには、朝から満員電車に乗って、長時間過酷労働にさらされ、夜遅く帰る生活になる。私は、男の人こそ「やってられへん」と声をあげるべきだと思う。これだけ個人の生き方や家族の形態が多様化しているのに、制度が現実にあっていない。p9
こんな言葉を聞いたら、倫理感やら道徳やらに一家言葉をもつ自民党のおっさんどもは、やっぱり最初から対応する気はなくなるだろう。国が国民に求めるのか、国民が国に求めるのか。かなり難しいところだ。この言辞は、民主党の「おっさん」たちでさえ、なかなか、ニコニコとは受け入れがたいところだろう。
辻本 私はね、子ども年金「逆七五三プラン」という子供手当を個人的にあたためています。月額で1子目が3万円、2子目が5万円、3子目が7万円を15歳まで支給する。現在の子どもへの給付には親の所得制限などがあるけれど、それも外してしまう。p93
言論の自由があるわけだから、このような新書本の中でなら、なんとでも言うことは可能であるが、それを実現することは容易ではない。月額2万6000円の子ども手当を作ろうとしている民主党でさえ、かなりの抵抗を受けている。でもそれを実現化へのプロセスの上に載せているだけ、民主党はすごいと思う。
それを上回る「逆七五三プラン」は、辻本独自の「政策」であろうが、その社民党はたしか、子ども手当「月額1万円」でなかっただろうか。それに、民主党の「所得制限外し」に対して、社民党党首・福島みずほは、いまでも「所得制限」をつけるべきだと、主張しているはずだ。個人として、ひとりの女性として、「おひとりさま」、「負け犬」としての辻本は自由に発言していいだろうが、いまや国土交通副大臣となった辻本は、はて、どのようにこれらの政策や言動に統一性を持たせるのだろう。
私は上野千鶴子さんの「おひとりさまの老後」だけは買うまいと思っていた。現状「おひとりさま」であり「負け犬」として分類される私には、このタイトルは手にとるのがちょっと気恥ずかしい。でも自分の将来に不安をもっているし、親の老後など心配のタネはつきない。また、政治の場に身を置く者として、この本が政策的にどう位置づけられるのにかにも興味があった。そこで同じくおひとりさまの友人と誘い合い、書店に行った。辻本pi
民主党のマニュフェストであったとしても、政権を取る前はただの言葉でしかない。政権を取ればこそ、それをひとつの規範として国家の運営が始まる。ことほどさように、女性政治家一個人の「絵空事」が並べてあるこの本を、ひとつひとつ細かく検討する気はないが、鈴木宗男をあれだけ酷評しておきながら、今度は同じ閣内で手を取り合う運命となる。なんとも、政治の世界とはウソと欺瞞に満ちた、トボけた世界であろうか。
辻本 つまるところ「おひとりさま革命」というのは、「ぼちぼち革命」であり「まったり革命」ということでもある。大国主義で国際競争力重視の国より、バブルに乗っかる人ではなく身の丈に合った経済でええやんか。それも、それぞれの多様な生き方こそが大事にされるようにですね。p204
当ブログは、「自称」フェミニストであり、「男女共同参画社会」の実現におおいに「賛成」である。女性の社会的進出ばかりではなく、社会全体が「女性化」していくことにも大賛成である。しかし・・・・、この辻本という人、ホントに女性なのかな。戸籍上の性別はそうなっているかもしれないが、当ブログが思っているような、フェミニン、というニュアンスでは、ちょっとすぐには首肯しがたい。・・・・・、いや、よくはわからないが、「大阪のおばちゃん」、という意味では、たしかに女性なのかもしれない。
| 固定リンク
「46)地球人として生きる」カテゴリの記事
- Haruki Murakami What I Talk About When I Talk About Running(2010.02.11)
- 村上春樹スタディーズ(2005ー2007)(2010.02.10)
- 村上春樹を読むヒント(2010.02.10)
- 1Q84スタディーズ(book2)(2010.02.10)
- 村上春樹「1Q84」の世界を深読みする本(2010.02.10)
コメント