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2009/10/21

新版 民主党の研究

新版 民主党の研究 (平凡社新書)
「新版 民主党の研究」 
塩田 潮 (著) 2009/07 平凡社 新書  358p pages
Vol.2 No790 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★☆☆☆☆

 「新版」とはいうものの、オリジナルは2007/12にでたものであり、改訂版が2009/06にでたものの、政権交代どころか、鳩山民主党のスタートもおぼつかない地点であったので、この8月の総選挙で「政権交代」が現実化する前の状況を描写する時点で終わっている。

 政権交代が実現してみれば、民主党が掲げた「マニュフェスト」の実行に向けて、各論的なドタバタ劇が続々と報道されており、「政局的」な話題はすっかり引っこんでしまった。現在の自民党ではなんとも情けないし、社民、国民新党なども、ひたすら個人プレーにたよって存続を図っている段階だ。公明、共産は、相変わらずのスタンスを維持しながらも、影が薄れてしまっていることは間違いない。

 この本はひたすら「政局」的視点からのレポートであり、全体としては漠然とながら、一般的な国民でも理解していることを、ひとつにまとめてコンパクトに提供しているだけである。巻末に掲げられている60数冊の参考資料を一冊一冊読み込んでいけば、さらに克明に日本政治の民主党にまつわる政局を理解するには資するところ大きいだろう。

 だが、この本を読んでいると、結局は、鳩山、管、小沢、などを中心とした政局ばかりが中心になっていて、「政策」論がほとんどない。いざ、政権交代が実現してみると、八ッ場ダム、高速道路無料化、子ども手当、沖縄基地問題、羽田ハブ空港化、年金問題、消費税、郵政問題、地球温暖化、CO2削減、などなどの、個別的な「民主党」についてはほとんど「研究」されていない。

 「リベラルは愛である。私はこう繰り返し述べてきた。ここでの愛は友愛である。(中略)自由主義と市場経済の釈迦的公正・平等。つきつめて考えれば、近代の歴史は自由か平等かの選択の歴史といえる。自由が過ぎれば平等が失われ、平等が過ぎれば自由が失われる。この両立しがたい自由と平等を結ぶかけ橋が、友愛という精神的絆である」
 鳩山が著した前掲の「わがリベラル・友愛革命」と題する冊子にこんな一文がある。
p54 「違う星から『宇宙人』」

 アントニオ・ネグリ&マイケル・ハートの「<帝国>」において、マルチチュードが獲得すべきは、憲法、貨幣、武器、であるとされている。かつて鳩山由紀夫の政治哲学を揶揄して中曽根康弘は「ソフトクリームみたいなもの。甘くておいしいが、夏が終われば溶けてなくなる」p30と言ったとされる。これに反して、のちに鳩山は、芯ができてアイスキャンディーくらいにはなった、と反論したとされるが、なにはともあれ、「友愛」の一言だけで、政治の世界が片付くとはとても思えない。

 国連を中心として、未来的に世界政府が樹立される日が来るとして、「友愛」精神は重要だとしても、憲法、貨幣、武器、についての視点をキチンと確立しておかないことには、本当の現実的な話にはならない。いずれもが避けて通りたくなるようなテーマではあるが、直面しなければならない。

 沖縄問題を考えるとき、「武器」を考えなくてはならない。「すべての武器を楽器に!」と唱えて参議院議員になった沖縄のロック歌手がいたが、はて、このスローガンでコンサートしただけでは問題の解決にはならない。残念ながら、「武器」は無くならない。少なくとも無くなっていないし、無くなる傾向もない。オバマも核兵器削減を宣言したが、それは増えすぎている傾向に抑制をかけようというだけである。

 国民の多くは、民主党の政権交代を支持している。少なくともこれから4年は民主党政権が続くはずだ。いや続いて欲しい、と願っているのがほとんどだろう。なぜなら、いままであまりにも自民党の末期的症状がひどすぎたからだ。だが、「寄せ集め」政党の民主党の先行きは決して安泰ではない。つねに分裂や自滅の可能性は残っている。

 しかし、まずは安定政権の中で、ひとつひとつの政策の是非について、じっくりと議論・実行し、成果が挙げられるべきであろう。

 いまや政党としてのガバナンスもないと酷評される自民党だが、国会での両院支配という多数に支えられていただけで、党自体が具有していたと見られた政党としての政権担当能力は、実は幻であった。その点だけ見れば、同じように民主党が両院支配を実現すれば、自民党並みの政権担当能力を発揮するのは困難ではないだろう。p343

 小沢一郎は、「国民が主権者としてできる行為は、唯一選挙だけなんだから。選挙こそが民主主義の根幹だよ」と言ったとされる。本当だろうか。あとは数的に参院も抑えてしまえば、「民主主義」は完成するのか。この辺はなんとも怪しい。

 この本にはインターネットグーグルも、ウッドストックジョン・レノンも、オバマCO2削減問題も、瞑想も、脳科学もでてこない。ひたすら日本の政局の話だ。それ以上なにを望むのか、と言われればそれまでだが、しかし、当ブログの中でこのような本を読むとすれば、いかにこの本から「ひとつの世界政府」につながり、新しい「黄金の未来」へと続いていくか、という可能性をさぐるためだ。

 そういった意味では、日暮れて道遠しの感はぬぐえない。加藤和彦が亡くなった。仔細は分からないが、この世で、もうやりたいことはもうなくなった、という心境にだけはなりたくない。このたった一つの地球に生きる、この地球人たちにとって、やりたいこと、やらなければならないことは、まだまだ残されている。

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