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2009/10/17

石原慎太郎よ、退場せよ!

石原慎太郎よ、退場せよ!
「石原慎太郎よ、退場せよ!」 
斎藤貴男 /吉田司 2009/05 洋泉社 新書 191p
Vol.2 No784★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆

 老害を撒き散らすだけなら退場せよ!
 無責任体質全開の新銀行東京問題、
 花道にしたいだけの東京オリンピック招致、
 差別発言とともに進む社会的弱者切り捨て政策、
 教育現場から教員までもが逃げ出す教育改革、
 そして身内に甘いだけの人事と処世術・・・・・。
 この十年、新自由主義とナショナリズムの波に乗り、
 東京に君臨してきた「小皇帝」石原慎太郎だが、
 「時代に求められた男」の賞味期限はもう切れている!
 表紙見返し

 もともと石原慎太郎嫌いの人は多いのだろうが、直接ここまで露骨に「退場せよ」とまでは言いにくい。本のタイトルとは言え、当ブログの見出しとしてはかなり過激であろう。ましてや、「石原慎太郎よ」と呼びかけるほど親しみも感じてはいない。

 ただ、今回のオリンピック招致失敗にともなう150億円の行方など、気になることは多くある。コペンハーゲンで行われたIOC総会に一緒に行ったのが、すでに野党に下野した自民党の森喜朗・元首相だったのも、なんだか旧態依然としたイメージを残した。サメの脳、と揶揄される元首相だが、それはサメに失礼にならないのか。

 対談者の斎藤貴男は1958年生まれのジャーナリスト。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春などで仕事をしてきた。吉田司は山形出身1945年生まれのノンフィクション作家。小川伸介などともに小川プロを結成した。本書は二人の対談形式になっているが、こと石原個人攻撃に限らず、この「小皇帝」を支える歴史や時代背景を、こまかに検討する。

 作家・石原慎太郎、その作品群、それを支えた時代や家系、政治家としての姿、あるいは弟の映画スター・石原裕次郎に、特別な感情を持っている世代なら、この本はそれなりに面白かろう。表と裏、隠されてきた話や、思わぬ視点からの再点検。しかし、当ブログのような「地球人」というカテゴリから石原慎太郎を見た場合、その接点を見つけることは、相当に難しい。

 斎藤 何もわからないくせに、人気取りのためなら何でもやってみせるから、ああいうことになる。止められない都庁の役人たちも役人失格です。まあ、選挙であれだけの票を獲て信任を得たということだから何をやっても許されると思っているんでしょうね。事実、都民はそうしちゃたんだから。石原に何をされても仕方ないのも現実です。新銀行の内部なんて、石原の人間性が凝縮されたようなところですよ。p123

 この辺のあたりが一般的な石原に対する見方だろう。なんとも下衆で、手に負えないイメージがつきまとう。

 斎藤 ・・・オリンピック招致のための予算について言えば、55億円かかるとIOCに報告しています。ところが、世論が盛り上がらないので、どんどん上積みされて、いつの間にか150億円くらい負担することになっているようです。都の官僚にしてみれば、石原の機嫌を損ねたら自分の立場が危ないということですから。p126

 この本は今年の5月にでたものだが、この10月のIOCでの2016年リオデジャネイロ・オリンピック決定のニュースを待つまでもなく、東京でのオリンピックは、いまいち説得力のない大きなムダづくりに見えていたことは間違いない。

 斎藤 昨年、石原は北京オリンピックに招かれたでしょう。チベット問題をタテに中国はオリンピックを開催する資格がないと言っていた人が、そのチベットでの生々しい暴動と弾圧がまたしても発生したすぐあとに、ですよ。あの開会式をすごいすごいと、べた褒めしたんだよね。
 所が、帰ってきたら記者会見で、くだらんと言い出した。(略)2016年のオリンピックを東京に招致するためには中国を怒らせるわけにはいかないというだけでは説明できない。強い相手にひたすらおもねり、隠れてコソコソ陰口をたたく。キツネみたいな人ですね。
p164

 昨年勃発したFREE・TIBETムーブメントに即反応した当ブログとしては、この辺あたりの石原の言動もまるで納得がいっていない。今回だって、衆議院選挙前は、ひたすら悪口を言って鳩山批判を繰り返していた人物が、政権交代したあとの国連安保理の演説で株を挙げた鳩山を、IOCの開催地決定戦にひっぱりだした。そして、招致戦に敗北したあとは、国の後押しが足らなかったと、自分を棚に挙げて国を批判する。どこまでも懲りない性格だ。

 吉田 大東京主義の時代というのは、東京が世界都市になって、地方は全部寂れていくわけですよね。基本的には夕張化する。すると日本という国はあるけど、東京が日本の中心というよりも、東京一国主義みたいなものになる。当然、東京「単独主義」ってゴーマニズムが出てくるよな、米国ブッシュ政権の時代みたいな。つまり、石原慎太郎があの「暗愚の帝王」と呼ばれたジョージ・ブッシュ化しつつあるのが、いまのトーキョーじゃないんでしょうか(笑)。p178「石原慎太郎への退場勧告」

 このあたりの感覚はまったく同感だ。ただ、この現象は石原ひとりで起きているものではない。それをささえているトーキョー人たちがいる。

 斎藤 石原本人はもはやどうでもいいと思います。どんな人であっても差別してはいけない。わざわざ権力の座に据えた方が悪い。落とす選択肢があったんですから。実際、都民は責任とらされて、自分たちの血税を、あの人の遊びと利権のために使われているんですからね。次の選挙でちゃんと落としてやらないと。批判を承知で言うけど、石原都政に本気で怒れないとしたら本物の奴隷ですよ。p188

 地球人や地球人スピリットという視点から見直したら、トーキョーもまだまだ素晴らしい可能性が残されている。しかし、旧態依然とした石原やそれを支える都民がいるかぎり、すでに未来を失っているのが、今の東京だ。

 

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