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2009/10/26

ウィキペディア・レボリューション 世界最大の百科事典はいかにして生まれたか

ウィキペディア・レボリューション
「ウィキペディア・レボリューション」 世界最大の百科事典はいかにして生まれたか
アンドリュー・リー /千葉敏生 2009/08 早川書房 新書 443p
Vol.2 No796 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★☆

 当ブログでは「クラウド・コンピューティング」というカテゴリを作ってネット関連の書き込みを入れておいたが、最近「クラウドソーシング」という別概念があることを知った。日本語においては同じ「クラウド」というカタカナになってしまうが、片やCloud Computing(雲の上のコンピューター)であり、片やCrowdsoucing(群衆の知恵)であり、まったく意味は違う。当ブログとしては、肩入れしたいのは、当然のごとくマルチチュードと通底しそうなクラウドソーシングの方である。

 混乱するといけないので、今後、当ブログとしては、この二つの言葉をきっちり使い分けして行こうとは思うが、この混乱(笑)に乗じて、当ブログとしてのカテゴリ名を「クラウドソーシング」と変更することにする。その方がなんだか楽だ。

 この本の中にもクラウドソーシングの単語がしばしば登場するし、ある意味では、この本はまさに、そのクラウドソーシングそのもののウィキペディアに焦点をあてている。ウィキペディアについてはもう繰り返すこともあるまい。当ブログでも何冊かペラペラとめくってきた。

「ウィキペディア完全活用ガイド」 2006/12

「ウィキノミクス」2007/06

「グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?」 2008/06

「ウィキペディアで何が起こっているのか」  2008/09

 なんでもかんでもレボリューションと名付ければいいものでもないが、カウンターカルチャーとしてのコンピューティングの流れのを汲むものとして、確かにインターネットからフリーソフトウェア、リナックス、のあとにくる大きな成果物のひとつはウィキペディアだ。社会全体、インターネット社会全体の中でのと言えばおこがましくても、少なくとも「百科事典」の中でのレボリューション、ということでいえば、たしかにこれはレボリューションそのものだ。

 日本語版ウィキペディアの大きな欠点は、登録ユーザーが少ないため、ウィキペディア・ユーザーの国際コミュニティや、全プロジェクトを取りまとめる非営利のウィキペディア財団への参加が少ないことだ。p285

 グローバルなプロジェクトであるウィキペディアだが、言語圏におけるそれぞれの事情がある。アメリカ版と英国版など、おなじ言語と思われるものでも、米語と英語の違いがある。ましてや政治的な体制の違いがあり、中国やアフリカなどの、それぞれのお国柄の違いが表れていて、なかなか興味深い。いずれは全体としてゆるく繋がり、均質的な部分を維持しつつも、それぞれの違いを際立たせていくことになるのだろう。

 日本のオンライン活動に大きな影響を与えているサイトに、「2ちゃんねる」がある。2チャンネルは、匿名の投稿で有名なサイトである。日本のウィキペディア編集者があえてユーザー名を登録しようとしない理由のひとつとして、自分の身元を明かさない2ちゃんねるの「完全な匿名性」の普及が挙げられることが多い。p284

 ネット上の匿名性はメリットでもありデメリットでもある。日本には2ちゃんねるがはびこってしまったがゆえに、ネット上にいかにも日本的な陰湿な文化が育まれている、と考えることもできる。そういう意味では、現在の日本のSNSである「mixi」独り勝ち状況も、あとあと考えると、メリットとデメリットが生まれてきそうだ。かつて日本のパソコン界にNECの98シリーズが大きく幅を利かせたことがあったが、あのようなドメステッィクな踊り場状態が生まれている。

 本書は、アメリカのサイエンスライターの手による本のほとんどがそうであるように、微に入り細に入り書き込まれ過ぎていて、やや冗漫なところがある。日本の「新書」ならこの3~4分の1の分量で、さっさと本論だけ書いて済ましてしまうだろう。そうでないところがいいところでもあるし、悪いところでもある。

 ウィキだけじゃなくて、パソコンやインターネットの歴史の中から生まれたウィキぺディアというものを理解したければ、この本はうってつけであるが、もうすでにその概略を知っている読者にとっては、また同じ内容のストーリーに付き合わされることになる。

 かくいう私もウィキぺディアにIDを登録してはいるが、読者としての活用ばかりで、書き手としての参加はこれからである。ウィキペディアにかぎらず、クラウドソーシング、としてのグローバルなネット社会への参加は、決してうまく行っているとは言えない。模索中。これから乗り越えられるべき課題は大きい。

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