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2009/11/11

ほびっと 戦争をとめた喫茶店 ベ平連1970ー1975 inイワクニ

ほびっと戦争をとめた喫茶店
「ほびっと 戦争をとめた喫茶店」 ベ平連1970ー1975 inイワクニ 
中川六平 2009/10 講談社 単行本 285p
Vol.2 No822 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆

 このお店に一度だけ行ったことがある。行ったことがあるのだが、記憶が定かではない。なんせもう37年前のことだ。忘れてしまっていて当然だ。そこで働いていたり、お店をつくったり、反戦運動をした人たちにとっても、記憶が定かでないことも多いだろう。だが、著者は当時の日記を偶然見つけては、当時の記録を克明に再現する。

 「ウッドストックがやってくる」を読んだ時のような、ちょっと気恥ずかしいような、だけど興味津津というような、ないまぜになった感情が湧きあがる。正直あまり思い出したくなかった。もうすでに過去のことだし、「戦争をとめた喫茶店」とは、ひいき目にみても、ちょっと大げさではないか。そんな思いが去来して、読むのが後回しになった。

 1972年の夏、私が山口県岩国市の反戦喫茶「ほびっと」を訪れたのは、8月7日のことだと思われる。定かではない。というのも、この時ヒッチハイクで日本一周をしている最中で、北海道の帰りに三沢の基地に寄り、そこから一気に南下し、返還されたばかりの沖縄まで行って、その帰りにナガサキに寄り、ヒロシマに向かう旅路であった。その日程は自分たちがその旅をまとめたミニコミ誌「時空間」創刊号に書いてあるが、要所要所しか書いておらず、中川六平メモほどの資料性はない。

 思えば、8月6日はヒロシマの平和記念日だった。私は、その翌日にヒロシマに着いたのであった。その日かさらに翌日に私は「ほびっと」に行ったのだ。私の記憶によれば、そのお店に入ったのだが、店の中は閑散としていて、黒人が2名ほどいたような、いなかったような、そんなイメージしか残っていない。コーヒーを一杯飲んできたのか、そのまま返って来たのか、その辺も定かではない。

 この本によれば、1972年の8月7日は月曜日で「ほびっと」は休業日だった。しかも6月頃に警察の家宅捜査を受けるという受難のあとだった。ヒッチハイクの途中であった私には、そのような細かい情報はなかった。ただ、メモした住所を頼りに、トラックやマイカーをヒッチハイクしながら、辿りついたのである。それ以上のことはない。

 しかしよく考えてみれば、ミサワ、オキナワ、ナガサキ、ヒロシマ、イワクニ、などなど、当時18歳のハイティーンの旅としては、よくよく「社会的」スポットを回ったものだと思う。他にも、一般的な観光地や神社仏閣も回ったのだが、80日間の旅の中で、よく「ほびっと」まで辿りついたな、というのが、偽らざる感想だ。

 イワクニには「イージー・ライダー」監督・主演のピーター・フォンダの姉、ジェーン・フォンダがやってきてコンサートをやった。その当時の状況も活写されている。たくさんのことがあったのだな、としみじみ思う。べ平連とはちがうが、当時の別のセクトに属していた荒岱介の一連の著書を読んだ時のような、どこか面映ゆい、どこか哀しい、どこか嬉しい、ないまぜになった感情が吹きあがる。「昔、革命的だったお父さんたちへ」という本のタイトルを思い出したりする。

 この本の巻末には鶴見俊輔が「日本人の中にひそむ<ほびっと>」という一文を寄せている。

 「ほびっと」は、惜しまれてつぶれた。六平は近所のおばさんに人気があり、送別におむすびをもらった。「ほびっと」の終わりからしばらくして、ベトナム戦争はベトナム人民の勝利に終わった。やがて人間は過ぎてゆく。その終りの前に、日本人民の中にひそんでいるホビットやザシキワラシに呼びかけて、新しい反戦運動がおこるのを待つ。鶴見俊輔 p285

 記した日時は、2009年8月30日。ちょうど、日本における「政権交代」が実現した日であった。鶴見は、当然、このニュースを聞きながらこの一文を書いたに違いない。

 あと数日すると、アメリカからオバマ大統領が来日する。今回は超過密スケジュールで無理だが、現役大統領としてヒロシマを訪れたい旨を表明している。

 悲しいことに、まだ、「戦争はとまって」はいない。アフガニスタン戦争のベトナム化が懸念されている。いくら「核のない世界」が宣言されたとしても、その実現には、これからもはるかに長く続く道のりが残されている。

 「ほびっと」を、昔の物語にしてはなるまい。昔、革命的だったお父さんたちは、「いちご白書」でオシマイ、と決め込んでしまっていいのか?この本がこの時期に出されたのは、決して、ノスタルジアだけではないに違いない。そう願いたい。

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