危ないダイエット 一億総ダイエットブームにひそむ危険な罠
「危ないダイエット」 一億総ダイエットブームにひそむ危険な罠
阿部 純子 2009/06 ディスカヴァー・トゥエンティワン 新書 p219
Vol.2 No831 ★★☆☆☆ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆
この本の前半部分は、いわゆる巷でいわれるところのダイエットの危険性について語られている。もとより、朝バナナなどの「ばっかり食い」療法や、誇大広告の「サプリメント」療法には関心はない。でも、新ためて、このように列挙されると、ああ、このままデブのままでいいじゃん、と思わないわけでもない。いや、それじゃぁいけない。
ベストセラー書籍「いつまでもデブと思うなよ」の中で著者の岡田斗司夫氏は、レコーディングダイエットを提唱している。体重と体脂肪、食べたものをすべてを記録するというものだ。p75「レコーディングダイエットの落とし穴」
結果良ければすべてよし、ではあるが、必ずしも、誰もが、体重などを記録しただけで岡田斗司夫のようにダイエットに成功するとは、限らない。
ところが”記録をつけること”が目的になってしまい、まるで生化学の実験データのようにエクセルで美しい表を作るだけで満足してしまう人もいる。美しい表は悪くはないが、表を作ることが目的ではない。表からフィードバックを得るために行うのだ。p77
まぁ、そういうことではある。
リバウンドしない減量ペースの目安は、一ヵ月あたり、たった1キロの減量だ。いざダイエットとなると張り切ってしまう人には、少なすぎて物足りない数値化もしれない。だが、これがもっとも効果的な痩せ方だ。最大でも体重の5%。これ以上を一ヵ月で減らすようなまねは厳禁だ。p135
この数字はかなりアバウトではないですかね。岡田斗司夫みたいに117キロもあったら、その5%というと6キロ近くなる。1キロか6キロ、という数字はかなり曖昧。5%が1キロの人はもともとの体重が20キロの人のこと。これじゃぁ、あまりに「安全すぎるダイエット」のように思うが・・・。いや、20キロの人がダイエットしよう、という発想自体、それは「危なすぎる」でしょう。
脳科学者の池谷裕二氏は脳をだますためのテクニックとして、次のA~Dの方法をすすめている。(「脳だま やる気の秘密」幻冬社)p149
おや、池谷裕二は、他の流れでも読書中だが、こちらにもでてきたか。
A 理想のロールモデルを描く
B いつもとは違ったアプローチをしてみる
C とにかく何も考えずに体を動かす
D 自分にごほうびをあげる 149~151p
う~む、ふむふむ。なんだか、当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界に近づいてきましたな。純粋に医学や科学とはいいにくい。いや、そうであることのほうが真実なのであろうか。
「ストレスを食に向かわせない」、という章では、つぎなような表現もある。
座禅などで瞑想の効用に関しては、世界中で研究が行われていて論文も多くある。アメリカのマサチューセッツ工科大学のブッシェル教授は、座禅と同種の瞑想を10~20年間続けている人と一般の健常者の脳の画像を、磁気共鳴画像(MRI)を使って比較する実験を行った。p176
実験を行ったことは素晴らしいと思うが、「座禅と同種の瞑想」とはいかなるものか。さらに「10~20年間」続けている人と、「一般の健常者」というカテゴリを、脳の画像を比較だけで単純に検討するのは、かなりトンデモ科学に近付いていると、私なら思う。
早朝の座禅を習慣にしている上場企業の社長は意外に多い。例えばTM瞑想は、世界中でビジネスマンを中心に400万人が愛好していると言われている。日本でも元ソニー会長の井深大氏や京セラ会長の稲盛和夫氏が実践するなど、広がりを見せる。
ビジネスパーソンにとっても、プレッシャーに負けないこと、ストレス発散、精神集中に座禅は最適だ。p177
たしかにTMは宣伝上手だし、積極的にこのようなデータを出して、研究者に利用されやすくしているが、私は眉唾だ。結果的にはねつ造されたデータをもとに研究をすすめているにすぎない。
さらに言えば、一部上場のどうの、というのと、あの芸能人が、というのと、どのような違いがあるのか。これもまたトンデモ瞑想、トンデモストレス解消法の案内人になりかねない。
とりあえず、無理せずできそうなことを21日間続けてみよう。21日間だけの小さな努力。そうすればもう無意識が勝手に行動を選んでくれるから、自分の習慣とすることができるのだ。p214
21日間、というのは賛成するが、その根拠もあいまいだ。本書に対する当ブログの評価は、プラス、マイナス、相半ばする。著者は法学部法律学部出身のサイエンスライター。
「16歳のころより数々のダイエットを試みて、10キロの減量に成功し、痩せるだけでなく、健康で精神的にも強い体を手に入れた。」裏表紙見返し
私なら、16歳でダイエットしているなんて奴は、もともと不健康なやつと思う。しかも「10キロの減量」を「成功」と表現するのか、と、ちょっと疑問。「健康で精神的にも強い」なんて自己紹介する奴は、信用ならん。そもそも健康とは何か。「強い体」を「手に入れる」とはどういうことか。ポケットにお気に入りのフィギュア人形を突っ込むのとはわけが違うのだ。
理解できるところもあるのだが、この本、読めば読むほど、だんだん評価が下がってしまった珍しいケース。最初★4つだったのに、修正につぐ修正で★2つになってしまった。所詮は所詮、よくある手のトンデモ本の類の域をでないだろう。
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コメント
この本を読んだことなど、すっかり忘れてしまっていた。色々な旅をして来たものだ。
投稿: Bhavesh | 2018/10/23 16:44