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2009/11/14

次のグローバル・バブルが始まった! 国際マネーはこう動く

次のグローバル・バブルが始まった!
「次のグローバル・バブルが始まった!」 国際マネーはこう動く
山﨑養世 2008/07 朝日新聞出版 単行本 255p
Vol.2 No826 ★★☆☆☆ ★★★☆☆ ★☆☆☆☆

 民主党の次の内閣の国土交通省大臣を務め、「日本列島快走論」などがあり、いわゆる民主党支持のシンクタンクのひとつと目されるグループを率いる山﨑養世ではあるが、「環東京湾構想」などよりは、元ゴールドマン・サックスの金融マンとして、こちらのタイトルの本のほうが、より彼らしいのではないだろうか。

 出版時期がもうすでに一年以上経過しており、書かれている内容もずれていたり、すでに結果がでていることも多いだろう。ひとつひとつ点検するつもりはないが、「環東京湾構想」「日本『復活』の最終シナリオ」の同列として、この本があることになんだか納得がいかない。

 投資、投資、というけれど、結局は博打じゃぁないか、と思ってしまう。博打はその胴元が一番もうかる。掛け金をどんどん釣り上げることによって、その何割かを胴元はもらう。投資家の損得に関係なく、胴元ばかりは儲かるシステムになっているのではないか。

 だから、世界恐慌などと言って投資家熱が下がった時、「次のグローバル・バブルが始まった!」と、新たなる挑発をして、投資家がまたマネーゲームに戻ることを推奨する。胴元にとっては、バブルが来るか来ないかなんてどうでもいい。バブルが来ると信じた投資家があらたに投資してくれることだけが、目的なのだ。

 そう考えてみれば、この本のタイトルは理解できる。この本には、当たったの当たらないのいう話がいくつもでてくる。そんなのは表現の違いのうちであることが多いし、何とかの鉄砲数打ちゃ当たるで、何割かはその通りになることもあるだろう。そうならなかったことについては、二度と触れない。これって、つまり、商売として行われている「占い」と同じシステムだよなぁ、と思う。

 当たるも八卦、当たらぬも八卦、あとは自己責任でお願いします、ってか・・・・。これって相当に恐い。ベンチャー・ビジネスなら、その勇気も高く評価されるだろう。ハイリスク・ハイリターン、って鼓舞するけれど、それってやっぱり向き不向きがある。やりたい人はやればいい。やりたくない人にまで無理強いすべきものでは、もちろんない。

 株は下降気味で、底値で買うことこそ、最大の利益を生むシステムであることは理解できるし、高値で握らされれば、その後、利益を確定することはなかなかできない。それも余裕がある御仁たちの、趣味のうちならば、笑ってみていられるだろう。

 しかし、どこぞの県知事選にまじめに立候補するような御仁が、このようなハイリスクの道に、一般人を引きづり込むことは、慎むべきことなのではないだろうか。郵政問題もさまざまな角度から見直しされる必要があれど、小泉=竹中コンビの改革路線が、人々の年金の「トラの子」まで、国際金融の荒波の中にさらけ出せ、と言ったのも、やっぱり酷だったな、と思う。リスクが高すぎた。

 日本のように外資をハゲタカ呼ばわりする代わりに、「一緒に儲けよう」と呼びかけて、国営企業を変える代わりに世界に通用している外国企業に自国に来てもらい、人と金をいれさせ、資本主義経済の下で生きてゆくために必要な技術とノウハウを、それまで全くその素地がなかった中国に移転させたのです。p124

 インドが非常に逆説的なのは、人種とカースト制のために一見すると世界一差別の多い国のようでありながら、世界一開かれた民主主義国という一面も持っているのです。p148

 北欧諸国にとって大きなプラスだったのは、EUという共同体ができたおかげで、その中に入っている限り安全保障の心配をしなくてよくなったことです。これは戦後の日本がアメリカの傘の中に守られていたのと同じで、小国にとっては非常に経済的にプラスが大きいのです。p244

 さまざまな表現があれど、これらの表現を無批判的に、素直に受け入れることはできない。ましてや投資セールスマンの話など、どこにどういう地雷を隠しているか、わかったものではない。いつのまにか相手のペースに巻き込まれて、引っこみがつかなくなる。

 日本の公的年金には150兆円の莫大な資金が貯まっています。しかし、その資産の三分の二程度を金利の低い国際などを中心に運用してきました。確かに、元本は確実に還ってきます。しかし、一方で国民に約束した年金資金の利回りは確保できません。リスクを取らないと言いながら、年金資金が足りなくなるリスクを高めてきたのが、日本の年金運用なのです。p238

 この辺なども、いち金融セールスマンの言辞なら、眉唾で聞いていればいいが、少なくとも、「次の内閣」に組み込まれるような人物であり、与党を支えるシンクタンクの代表としての言葉だとすれば、あまりにもリスクが高すぎる。

 私たちは国が目覚めるまでただ消極的に待っているわけにはいきません。投資家一人ひとりが、ここまで繰り返し述べてきた世界経済の構造的な大変革に注目し、積極的に国際投資、そして日本への投資について考え、行動してほしい。それが自分自身の資産を増やし、生活を豊かにし、ひいては自らの生命を守ることにもつながるのですから。p250

 これがこの本の結句である。投資の本としては、昔からの典型的な結論と言わざるを得ない。投資の本としては、これしか結句はないのだ。ここまでのすべてはここまで来るための与太話でしかない。この本でしか得られない情報なんてない。つまり、この本はこの結句だけを読めばそれで済む話で、しかもごくありふれた結句だ。金融セールスマンの口上としては、これしかあり得ないのだ。

 だからこそ、私は、ホントかな・・・・? と首をかしげる。

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