日本「復活」の最終シナリオ
「日本『復活』の最終シナリオ」 「太陽経済」を主導せよ!
山崎養世 2009/02 朝日新聞出版 単行本 275p
Vol.2 No819★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★☆☆☆
著者の本は、「日本列島快走論」、「高速道路はタダになる!」、「環東京湾構想」、などを読んだ。他にもいくつか著書があり、「次のグローバル・バブルが始まった!」や「米中経済同盟を知らない日本人」などもあるが、当ブログで読み進めるかどうかは、ちょうどボーダーラインに位置している本と言えるだろう。
民主党の高速道路無料化は賛成である。自民党政権でさえ、ETC1000円の旅を実現したのだから、民主党なら首都圏など一部をのぞいて、全国の高速道路の無料化は実現してくれるのではないだろうか。と、期待を込めて待っているのだが、国民の6割はこの政策に賛同していないという。
総論賛成、各論反対、という実態はよくあることだが、民主党には賛成だが、そのマニュアルのこれとこれは駄目、というスタイルはよく見聞きする。「コンクリートから人へ」のスローガンには好感を持っても、うちの県のダムだけは完成してくれ、というのが一般的な地域住民の意見だ。あっちの新幹線はつながなくていいから、こっちの高速道路は車線を増やしてほしい、などなど、ひとりひとりの意見を聞いていたら、まとまるものもまとまらない。
さて、この山﨑養世の「最終シナリオ」も、その「太陽経済」とやらの政策を、仮に賛成する国民が多くても、いざ実行しようとすれば、「総論賛成、各論反対」の波に洗われるに違いない。ひとつひとつの政策は、やはり「数」に頼った強権的な政権によらないと、実現できないのか。
大陸棚での原油採掘や原子力発電所の増設に消極的で、石油会社への増税をも唱えるオバマに対する業界の圧力は強大です。しかし、オバマがアメリカ経済を本当に石油経済から脱却させられるかどうか、そして浪費と過剰消費の伝統を超えて、アメリカ国民に「足るを知る」ライフスタイルが定着するかどうかが、アメリカ経済復活の指標といえるでしょう。p76「石油マン退場、オバマはなにを『変える』のか」
良かれと思ってもそれを用いて実行しようとすると、さまざまな抵抗がある。これは世の常である。それでもなお、実行するとしたら、それを超えていくのは何か。
また電気自動車の開発にともない、GPS(全地球測位システム)などを利用した衝突回避・運転支援システムや自動運転の技術開発も進むでしょう。日本は、世界に先駆けて全くガソリンのいらない事故も起こらない、新しい自動車社会を目指すべきです。p122「日本の中心は『電気自動車』」
目指すのはよいが、あまりに飛躍的すぎるように思う。100年単位でなら可能かもしれないが、数年のサイクルで体制が変わる日本の政治システムでは、これは無理だろう。あるいは、まったく事故が起こらないとはあり得ない。少なくともこの数年来にできる話ではない。
今こそ、アジア世界の一員として、日本は持続可能な共存共栄モデルを築いていかねばなりません。
そのためのキーワードを、あえてわたしは「SAVE HUMANITY」(セーブ・ヒューママニティ)という英語で表します。p241「合言葉は『SAVE HUMANITY』」
鳩山政権の「東アジア共同体」構想や「「人へ」などのスローガンともカブるところがあるが、それを実行できるかどうかは、全く未知数だ。民主党は、それを宣言し、少なくとも具体的な国内外の政治の場で提案しているだけ、リアリティがあると言える。
世界は、太陽経済を導入する方向に大転換を始めています。
アメリカは、オバマ新大統領のもと、太陽経済の先頭に立つことでアメリカ経済を強化しようとしています。環境政策の導入で先行するヨーロッパも、今後の主導権を握るためにしのぎを削るでしょう。一方、中国やインドをはじめとした途上国は強烈な自己主張をして、自分に不利だと思う国際的な取り組みには反対するでしょう。ぼやぼやしていると、世界一の環境先進国である日本が、一方的に他の国の環境対策の資金を負担することになりかねません。p264「人類が自らを救うには、石油経済から太陽経済に変わらなくてはいけません。」
この本は2009/02にでているので、オバマの就任直後であり、まだ自民党政権下にあって、「政権交代」可能かどうかの瀬戸際で書かれている。だから、ひょっとすると民主党への期待を込めて周囲の外堀を埋めるために書かれている本であるのかもしれない。そういう時代背景を考慮しつつも、当ブログの中でよむとすると、いくつかの違和感が残る。
ひとつは、「頑張れニッポン、チャチャチャ」という論調であり、自らの団体をどことなく外資系企業で働いてきた人間たちでまとめあげて、過大なビッグマウスに終始するところである。二つ目はヒューマニティ、といいつつ、そこからさらにスピリチュアリティにどう下りていくか、というところの目が見えてこないところにある。「太陽経済」という独自のネーミングを使いつつも、この本のタイトルが表すような仰々しい表現が好きな人たちなのだなぁ、と思う。
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