池上彰の20世紀を見にいく
「池上彰の20世紀を見にいく」
池上彰 /テレビ東京 2008/12 小学館 単行本 58p 付属資料:DVD1
Vol.2 No852 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★
中学校図書館から借りてきた一冊。池上彰は長いことNHKテレビ「週刊こどもニュース」でお父さん役をやっていた解説者。この組み合わせで「20世紀」を見にいく。この本、シリーズ本ではなさそうなのだが、この本に書かれているのは、「20世紀」の前半。とくに「戦争」に焦点が当てられている。しかも、それらはすべて、残されていた映像を使って語られている。
「弓道パーフェクトマスター 」を見た時も驚いたが、書店のスポーツコーナーに行って見れば、昨今はスポーツ解説書はかなりの割合でDVD付きのマニュアル本が多くなっているようだ。この「20世紀を見にいく」にも、DVDがついており、全部見ると123分かかる。すべてが圧倒的な当時の映像を使用している。
真珠湾攻撃から始まり、日清日露、第一次世界大戦、ロシア革命、昭和天皇、関東大震災、満州事変、上海事変、満州国、国際連盟脱退、ヒトラーの誕生、全14回の映像を見ているだけで、実に、いかに20世紀が戦争の世紀だったかが、いやというほどわかる。
20世紀も、後半に生まれ、いわゆる「戦後」に育った「戦争を知らない子供たち」世代の私ではあるが、あらためてこうして「20世紀」を見せられると、とてもとても、日本は平和な国家だ、なんて主張することはできなくなる。ましてや、団塊世代ジュニアのさらにその子供たちがこのDVDを見る時代になっている。何も知らないで育つより、このような「歴史」があったことを知っておくことは、とてつもなく重要だと思う。
当ブログでは「オバマは何を変えるか」にアクセスが集中しているが、同じオバマ本なら、むしろ、私は「オバマ大統領がヒロシマに献花する日」のほうが大切な本だと思う。オバマに期待するものは確かにある。しかし、それを期待するからには、「私たち」は何をしなければならないのか。
オバマがアメリカ大統領としてヒロシマに献花してくれるなら、その同等の行為として、日本国首相は、真珠湾の「戦艦アリゾナ残骸上に建つアリゾナ記念館」に献花すべきであるとする主張は全うなものに思える。すくなくとも「私たち」日本人は、被害者としての立場だけを考えがちであるが、加害者としての「私たち」日本人が、どのような行為を「20世紀」に行ってきたのか、知らなすぎるのではないだろうか。
「チベット問題」における中国共産党の動きに対しても、批判が多く見られるが、この「20世紀を見にいく」などを見ていると、20世紀において、大国でありながら、世界列強から好き勝手に侵略された中国が、世界から軽く見られてはいけないと、身を堅くしていることが理解できる。
はずかしながら、私などは、この本とDVDで初めて、20世紀のジグソーパズルが少しづつ大きな図柄を持ち始めるような感触を持った。まもなく日米開戦の日、12月8日がやってくる。あらためて、人類の歴史の大きなうねりを感じるとともに、現在、読み進めているヘルマン・ヘッセが、生きようとしていた20世紀とは、どういうものであったのかを、角度を変えて考えることができた。
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