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2009/12/25

最後のガラス玉遊戯者 ヘッセ

ヘルマン・ヘッセ全集(第16巻)
「ヘルマン・ヘッセ全集(第16巻)」 全詩集

ヘルマン・ヘッセ /日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会 2007/04 臨川書店 全集・双書 531p
Vol.2 No884★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆

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「最後のガラス玉遊戯者」

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遊戯の道具である色さまざまな玉を手にして

彼はうつむきながら座っている

まわりに広がる国土は戦争とペストに蹂躙され

廃墟にはキヅタが生えてミツバチが飛び回り

疲れた平和がおぼろげな讃美歌を響かせながら

老年に達した静かな世界にただよっている

老人は色とりどりの玉を数えながら

青玉をひとつ、白玉をひとつ掴み出し

大きな玉をひとつ、小さな玉をひとつ選び出し

それらを輪に並べて遊戯のために整える

かつては象徴をあつかう遊戯において傑出し

数多くの芸術と数多くの言語に熟達した巨匠

世界中を知り尽くす学識を誇り、世界中を旅して回り

世界の隅々にまでその名が知れわたった著名人

そして常に弟子や同僚たちに慕い求められた人だった

今、彼は取り残され、老いて消耗し、孤独に沈み

もはや彼の祝福を求める弟子はひとりもなく

彼を議論へと誘う遊戯名人もいない

みな逝ってしまったのだ

カスターリエンの聖堂も蔵書も学舎もない・・・・

老人はガラス玉を手にして瓦礫の山に憩う

かつて多くを物語った象形文字は

今はただ色鮮やかなガラスの破片にすぎない

それらは高齢の人の手から音もなく転がり落ち

砂の中に消えてゆく・・・・・

 p300

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