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2009/12/25

読書狂  ヘッセ

ヘルマン・ヘッセ全集(第8巻)
「ヘルマン・ヘッセ全集(第8巻)」 ロスハルデ クヌルプ 放浪 物語集4 1914-1918
ヘルマン・ヘッセ /日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会 2005/12 臨川書店 全集・双書 363p
Vol.2 No880★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆

「読書狂」

 この巻に収められている「クヌルプ」は、先日、40年前の翻訳の文庫本で読んだ。ヘッセについてよく調べもせずに、でもいきなりヘッセが読みたくなって、お手軽に手元にあったものを読んだのだった。

 しかし、考えてみれば、せっかくの新訳が、ましてやこのような全集の中に収められているのだから、こちらを読めばよかったかな、とも思う。しかし、それはそれ、またそのようなチャンスが巡ってくるだろう。

 そういった意味では、この巻に収められている「夢の家」は、草思社版「庭仕事の愉しみ」の中に翻訳されていた、ということであるから、すでにそちらも読んでいたことになる。「庭仕事の愉しみ」は、当ブログのなかでは初めて読んだヘッセだったので、思いで深い。

 巻末にあった「読書狂」は笑いつつ、読んだ。小森健太朗の「ネメシスの哄笑」を思いだした。蔵書のなかに埋もれて暮らす人々もいる。物理的にも、精神的にも、書物の中だ。読書狂、とはよく言ったものだ。

 当ブログは、かならずしも読書狂ではない。もともと、かならずしも読書が得意ではないし、読書より面白いことどもについても知っている。それに本にまみれて暮らすライフスタイルというのは、この21世紀においてはちょっと、ダサいのではないか、と思う。

 Oshoもそうだったし、立花隆や松岡正剛などもそうだが、自ら図書館を持っていることを、ちょっと自慢げに話すところがある。たしかに本を読み続ければ次第に貯まってしまい、生活空間を圧迫してしまう。

 資金的に余裕がある人々は、もうひとつ部屋を作るなり、倉庫を借りるなりして自らの蔵書を保管する。さらに凝れば私的な図書館にしてしまう。その管理も難しいが、それらの何万冊という蔵書の活用もなかなか難しいだろう。読むことは読むだろうが、それを活用するとなると、なかなかできないだろう。

 現在、当ブログは、インターネットで本を探し、ネットから図書館にリクエストし、借りだした本についての簡単なコメントをつけて、ブログとしてリストアップしている。公開はしているが、基本的には個人的なメモである。私的に保管したければ、非公開にしてしまう手もあるが、今のところは、別にそれほど隠す必要性は感じていない。(もちろん積極的にさらすつもりもないのであるが)。

 読書ブログの良さは、自宅の住居スペースが圧迫されないことである。この4年ほどで当ブログでは2000冊ほどの本を読んだが、実際に購入した本は数十冊である。あとはほとんど公立図書館や大学図書館から借りてきた本。それらについては、自分なりに管理してはいるが、検索機能があるので、まるで図書館の司書にレファランスを受けているような便利さがある。

 そして、ここからが問題であるが、読書と言う趣味は、本との個人的な付き合いになりがちだが、ブログにおいては、公開性という特性があるので、これを使えば、密室での孤高な精神状態にならない、ということがある。

 当ブログにアクセスしてくる人々は、日に数十人から数百人。複数のブログを書いているので、一定ではないが、それでも常にアクセスはつづいている。この人々が何を思いアクセスして来るのか、何を思って立ち去っていくのか、すこし分からないところも多いが、たまに置き土産をおいていってくれる書込み者もいる。

 また、最近はアクセスログ解析があるので、その「読者たち」の性向も、完全ではないにせよ、すこしはわかる。決して、壁に向かって誰にも聞かれない独り言を書き連ねているわけではない。

 彼はこんな夢を見た。書物ばかりで高い壁を築こうと彼は懸命だった。壁はどんどん高くなり、もう本の壁以外何も見えなかった。世界中のあらゆる書物をここに積み上げて大きな建造物をつくるのが彼に課せられた仕事だった。

すると突然その建物の一部がぐらつき始め、書物は崩れ去り、ガタガタと音をたてて底なし沼に落ちていった。

 とぱっくり口を開いている隙間から、一条の不思議な光が差し込んできた。そして書物の壁の向こうに、彼は不思議なものを見た。光ともやの中にひとつの混沌を見た。(後略)p354「読書狂」

 当ブログはこのようにはならないだろう。もともと読書は苦手だし、そのうち飽きて、もっと別な趣味に関心が移っていくに違いない。しかし、現在のところ、インターネットと図書館、というシステムがうまいこと噛みあって、なかなかうまい流れができている。当面は、読書をこのスタイルで楽しんでいきたい。

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