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2009/12/08

デーミアン<1> ヘッセ

ヘルマン・ヘッセ全集(第10巻)
「ヘルマン・ヘッセ全集」 第10巻
ヘルマン・ヘッセ /日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会 2005/10 臨川書店 全集・双書 362p

「デーミアン」
Vol.2 No854 ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★★

 
当ブログにおける、想定外の「定本」たち、から、フロイト、ヘッセ、グルジェフを抜き出し、さらに、その中心位置にあると思われるヘルマン・ヘッセをクローズアップして読み始めてみれば、これがなかなか分量があり、一気に読み進めることはできない。遅々として進まない読書であるが、それは必ずしも苦痛ではない。

 その理由のひとつは、ヘッセを読み進めるにあたって、新しい全集が近年、非常に充実してきているからだ。この「ヘルマン・ヘッセ全集」全16巻(2007年12月完結)にしても、「ヘルマン・ヘッセ エッセイ全集」全8巻(刊行中)にしても、古びた古典を開く、という孤独な作業ではなく、新しい新訳で、明るい光の中で、多くの人々と同時代的に読む、という愉しみが増えた感じがする。

 「カラマゾフの兄弟」にしてもそうだったが、19世紀や20世紀の古典であっても、21世紀に登場した新訳で読むことは、過去のセピア色の写真をめくるような古典が、カラー画像になって現代によみがえるような、新鮮なイメージがある。

 ヘッセの「ガラス玉演戯」も、私にとってはお気に入りの一冊であるが、この全集のなかに第15巻「ガラス玉遊戯」となって収録されている。数種の翻訳を比較しながらよむことなど、私の得意とするところではないが、その蘇った新鮮さの中で、ふたたびあの感動を味わえるのでは、という期待感は高まる。

 「青春の作家、老いと死についての叡智を語る老賢者、反体制的でアナーキーな反戦平和主義者・・・・さまざまな魅力を持つヘッセの文学作品」(出版社パンフレットより)であるが、さて、この「デーミアン」は、その中での「青春の作家」としての代表作であろうか。

 単行本や文庫本で読むときなら、その分量が分かり、読む時間がだいたい想定できるものだが、全集の中のちょっと細かい文字の二段組は、なかなか読みだしてみないと、読了するまでの時間が測れない。「デミアン」も、あちこちに引っ掛かり、嘆息しながら読み進めているので、ページ数を数えてみれば、まだちょうど中間にさしかかったところだった。

 「僕たちはしゃべりすぎる」と彼はいつになく真面目に言った。「利口ぶったおしゃべりなど価値はない。まったく無価値だ。自分自身から離れるばかりだ。自分自身から離れるのは罪だ。亀のように自分の中に完全にもぐり込むことがで出来なくちゃならない」p55

 デミアン、という語感の中に、ヘッセは「デビル」を入れているだろう。キリスト教的風土の中で育ったヘッセにおける、アンチキリストは、しだいに東洋風なものへと移行する。

 そこには私の友がいつもと変わらずまっすぐに良い姿勢で座っているのが見えた。しかしそれでも、いつもとはまったく様子が違っていた、そして私の知らない何かが彼から発散し、彼を取り巻いていた。私は彼が目を閉じていると思ったのだが、見ると目は開いていた。しかしその目は何も見ていなかった。p55

 瞑想へのいざない。しかし、それは外に見られるものではなく、内へと向かう旅路なのだ。

<2>につづく

「ヘルマン・ヘッセ全集」

第1巻 「青春時代の作品 1」 

第2巻 「アッシジのフランチェスコ」 他

第3巻 「ペーター・カーメンツィント」 他

第4巻 「車輪の下」 他

第5巻 「愛の犠牲」 他

第6巻 「世界改良家」 他

第7巻 「インドから」 他

第8巻 「クヌルプ」「読書狂」 他

第9巻 「メールヒェン」、「小人」 他

第10巻 「デーミアン」 「戯曲の試み」

第11巻 「ヤーコブ・ベーメの召命」「アッシジの聖フランチェスコの幼年時代」 他

第12巻 「シッダールタ」 他

第13巻 「荒野の狼」 「東方への旅」

第14巻 「ナルツィスとゴルトムント」 他

第15巻 「ガラス玉遊戯」

第16巻 全詩集 「最後のガラス玉遊戯者」 他

「ヘルマン・ヘッセ エッセイ全集」

第1巻 「精神分析の夢日記」「「岩山で ある『自然児』の覚え書き」 他

第2巻 「私のホロスコープ」 他

第3巻 「ヨーゼフ・クネヒトからカルロ・ヘェロモンテへ」 他

第4巻 「追憶(忘れ得ぬ人々)・随想1(1899ー1904)」 

第5巻 未刊

第6巻 未刊

第7巻 未刊

第8巻 未刊

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47)表現からアートへ」カテゴリの記事

コメント

ラオツさん
唯一、のぞいているブログがここ、とは、光栄です。ときおり、コメントなど書いていただければ幸いです。
ところでtwitterのほうはどうですか? 話には聞いているのですが、どうもケータイ・メールがあまり得意じゃないので、とっつきにくいです。そのうち少し首をつっこんでみようかな、とは思いますが・・。
ん? P.P.M.D.・・・・・ なるほど、すこしづつ解明の糸口が・・・( ̄ー ̄)ニヤリ

投稿: Bhavesh | 2009/12/11 02:16

Bhaveshさん
ブログは書いていません
唯一、のぞいているブログが
この地球人スピリットジャーナルです
プロフィールですが
秘すれば花というより
秘したほうが花(笑)
最近twitterにはまっていたかな?
Oshoの教えを愛している女性をフォロー
http://twitter.com/Amygirl2011
P.P.M.D.

投稿: | 2009/12/10 20:48

ラオツさん
ランディについては、私もよく知りませんが、親戚のある御仁が、とある原子力関係施設のポストについていたことがあり、なんとそこで事故が起きた。それは、親戚の御仁が異動していなくなったあとのことだったらしいが、その時、その御仁とランディが、ネットかどこかでいろいろやり取りしたとかしないとか、そんな話をとある葬式の場で聞いたことがあった(笑い)。だいぶ前の話ですが・・・。

ラオツさんのプロフィールも、もっと知りたいですね。自分のブログとか書いていないのですか・・・?

投稿: Bhavesh | 2009/12/09 22:13

TwitterにはまっていたらノートPCがフリーズ
旧いデスクPCをしかたなく開けるとデミアンが(笑)
デミアンを好きな人の隠れたネットワークを
昔、田口ランディが<デミアン友だち>とよんでいたが
ランディのことはよく知りませんが友だちです(^^)
神の名は『アブラクサス』というフレーズが浮かんできます
個人的にこの本が精神世界への冒険のきっかけだった
デミアン アブラクサス アンドロギュノス
不二一元アドヴァイタ 日と月、易 老いたる子,老子
ヨーガ 禅 太一 ユニオミステカ 等々
さまざまなアンビバレンツなもの相反するものの一体化を
象徴する最初のアイコンだったなあ~

投稿: ラオツ | 2009/12/09 12:34

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