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2009/12/29

こころを癒す音楽

こころを癒す音楽
「こころを癒す音楽」
北山修・編著 2005/07 講談社 全集・双書 260p
Vol.2 No889★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆

 この本はちょっと面白く、興味深い点も多い。タイトルが陳腐で期待値が低かっただけ、開いたあとの展開に引きつけられた。北山追っかけの途中ではあるが、この本は、35人ほどの現場のカウンセラーや臨床心理士などが、おりおりの風景にあわせて音楽談義をする。文末に推薦曲が書いてあるのも意義深い。

 現場にいる人なら、共感するところも多いだろうし、自分でも聞きたくなるだろう。巻末に「ヒーリング・ミュージック・トップ50」のリストがアップされているのも面白い。「Youtubeで視る聴くビートルズ全15枚」のように当ブログでも聴いてみようか、とも思ったが、別な機会にしよう。

 というのも、そもそも、このトップ50のトップは「イマジン」であり、「レット・イット・ビー」であるからだ。ほかにも「ヘイジュード」や「イエスタディ」などが入っている。そしてよくよくみると、けっこう選曲が古い。おいおい、お里がわかりますよ。

 ヒーリング・ミュージックという意味では、専用に作曲された名曲がほかにもたくさんあるはずだ。ここにリストアップされているのは、いわゆるポップミュージックの流行歌だ。下手すりゃ、セラピストはともかくとして、クライエントは過去のその時代を思い出して懐古趣味になるだけで、けっして治療的に「癒されて」いるわけではないのではないか。

 心理療法的に「癒される」とは、「自己理解」がすすむ、というところにポイントがあるはずだ。歌謡曲的に「心を遊ばせる」ことだけを癒されるとは考えていないと思うが、それでもいくら2003年当時のリストは言え、これはちょっと再考をお願いしたいリストだった。

 きたやまおさむも、この本のなかでは、一執筆者として「海原を越えて どこにもない生演奏の記憶」という一文を残している。

 私は今でも思う。不特定多数に同じことを繰り返し送り届けるマスコミュニケーションよりも、特定の誰かに一回限りのメッセージを一度だけ送り届けるパーソナル・コミュニケーションの方があっていると。私に合っているのは、CDやレコードの録音された音楽ではない。一度限りの、取り返しのつかない生演奏、あるいは実生活なのであると。p50きたやまおさむ

 私もかろうじて団塊世代の弟分に位置しているが、この文章はいつ書かれたのかわからないが、2005年に書かれた文章であるとすると、これまたずいぶん古色蒼然しているなぁ、と思う。マスコミやレコードがいやなら、ライブや生演奏に戻るしかないのか。たとえば、現代のネット社会の機能を生かした、なにか新しい発想で物事を考えることができないのか。ちょっと残念である。

 なんとかの冷や水とやらの例えもあるので、別に若ぶる必要もないが、時代の青年の典型みたいにいわれていた存在も、時代とともに、過去の遺物(とまでいっちゃぁ失礼だが)になってしまうんだなぁ、と、悲喜こもごも感じたところではあった。

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