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2010/01/05

村上春樹の「1Q84」を読み解く<1>

村上春樹の「1Q84」を読み解く
「村上春樹の『1Q84』を読み解く」 <1>
村上春樹研究会 2009/07 データハウス 単行本 217p
Vol.2 No893★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆

 村上春樹研究会に属するのは平井謙、綾野まさる、藤枝光夫、の三名。この本を出すために作ったチームだろう。それぞれが第一部、第二部、第三部を担当している。はて、このような「解説本」の存在の是非を考えると、痛し痒しのところがある。

 ヘッセとフロイトのせめぎ合いのように、村上春樹を解析されたり分析されたりしても、本当のところはあまり面白くない。できれば勝手自由にそのフィクションの世界を味わっておればいいわけで、とやかく「読み解かれる」必要などないのである。

 とは言いながら、たとえば、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」などは、「続編を空想する」だとか、「謎とき『カラマーゾフの兄弟』」「小説家が読むドストエフスキー」などなどの副読本があったればこそ、小説嫌いを自認してやまない私でも、なんとかあの長編小説を読了することができたのではなかったか。

 とすれば、今回ようやく「1Q84」を読了し、ハルキワールドに手をつけようと思い始めたのも、これらの周辺の解説本があったればこそ、ということもできる。なにも全部を活用する必要もないだろうが、とにかく本体を読むのに役立つ範囲でなんらかの手がかりを他の本に求めることも悪くないだろうと思う。

 ということで、さっそくこの本を読んではみたのだが、まぁ、私には私の読み方があり、思い入れもある。いくら「研究会」の面々が「読み解いて」くれても、納得できないところも山ほどある。どちらが正しいのか、今度読み返してみよう、・・・・などと、気がついてみれば、いつのまにやら、まんまとハルキワールドにはまりつつあるのだった。

 白すると、初め何度もトライしても僕はこの「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読み進めることができなかった。一章を読み終えて二章に進む所で違和感が芽生え、止まる。何ヶ月か後にまた一章から始め・・・・・の繰り返し。それを何度やったことだったろう。今度読み進めることができなければもうやめようと再再再度? チャレンジしたある日そのハードルをすっと超え、この交互に展開する小説構造を持った作品を待ち望むようにまでなった。p19 平井

 ふむふむ。解説本を書くような御仁でも、小説を「読めない」時もあるのだ。この部分を聞いて、ほっとした。そんなもんなのか。みんな、もっとすーすー読んでいるものと思っていた。たしかに、面倒だなぁ、と思っていたが、こんど「1Q84」book3がでたりすれば、他の人を押しのけても、一番先に読んでみたい、と思うかもなぁ・・・。

 僕は20年近く前に、ある出版社から現代文学に関する評論集を刊行する依頼を受けた時、一つの章として村上龍の「限りなく透明に近いブルー」と村上春樹の「ノルウェイの森」を中心に論じることを予定していた。そしてその章のタイトルを「脳なき時代のソフトポルノ」というようにつけた。何故ならその頃、女のコたちがオナニーをするときにもっとも感じるのが「ノルウェイの森」で、男がずりネタに使うのが「限りなく透明に近いブルー」であるというアンケート結果が出回っており、それがとても印象に残っていたからである。p68 平井

 「限りなく透明に近いブルー」は、私も印象深く読んだ小説であり、記念碑的な作品であるとは思うが、あの小説をそのような目的で使ったことはない。というか、そういう使い方があったのか、とあらためて感心した。そして、ふむふむ、「ノルウェイの森」とやらは、そんな使い方もあったのかい・・・。そういえば、うちの奥さんもなんだか、やたらと小説に没頭しているときがあるが、小説嫌いの夫が、中身を見ないことをいいことに、トンデモナイ世界を浮遊している可能性もある。今後は、要観察だな。

 ヤナーチェックの管弦楽曲「シンフォニエッタ」とやらも、曰くありげになんども登場する。その他の小道具類も、それぞれのハルキニスト達にとっては、重要なポイントなんだろうなぁ。いろいろな楽しみ方があるもんだ。

<2>につづく

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