村上春樹スタディーズ(2000ー2004)
「村上春樹スタディーズ」(2000ー2004)
今井清人 2005/05 若草書房 全集・双書 339p
Vol.2 942★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
「村上春樹の『1Q84』を読み解く」の中で「村上春樹をもっと知るための7冊」として紹介されている「2005-2007」版をリクエストしたのだが、手配の都合上、こちらが先に来てしまった。それで初めてこの一連の7冊シリーズを意識した。たくさんの人の評論集として成立しているという意味では「村上春樹『1Q84』をどう読むか」に通じるものがあるが、こちらのスタディーズは、ひとつひとつの論文が長文で、ヘヴィーである。
このシリーズを斜め読みする、ということはできない。読むか、読まないか、どちらかだ。そして読むとすれば、7冊全部読まないと気が済まなくなるだろう。だから今回は、その存在を確認しておくにとどめ、万が一、次なるステージが当ブログで再開せれるとしたら、その時に、ひとつの柱となってくれるシリーズとなろう。つまり、クラウドソーシング「ハルキワールド」アドバンスコースな一冊と言える。
読みだせば、ひとつひとつが面白い。今回は、「『ノルウェイの森』を徹底批判する---極私的村上春樹論」小谷野敦、あたりを、とても面白く読んだ。しかし、ここからリンク*リンクでいくと、いくらとりとめのない当ブログとは言え、自らのテーマを見失い、茫漠としたものになってしまう可能性がある。
私が春樹を容認できない理由は、たった一つ。美人ばかり、あるいは主人公好みの女ばかり出てきて、しかもそれが簡単に主人公と「寝て」くれて、かつ20代の間に「何人かの女の子と寝た」なぞというやつに、どうして感情移入できるか、という、これに尽きるのである。p75
この「徹底批判」を読んでいると、「そうなんだよなぁ」と、かなりの部分で共感することがある。圧倒的な長編を読んでいると、まるで「洗脳」されたみたいになって、まぁ、そんなこともあろう、と読み進めてしまうが、「おかしいぞ」というところはたくさんある。
しかしながら、時代も空間も特定していない、しかもフィクションであれば、どうにも手に負えない部分がある。ましてや自らの「プロの嘘つき」とまで公言する小説家であってみれば、こちらがイキり立てばイキり立つほど、こちら側が空回りしてしまう可能性もある。
それらを知っていながら、なお、それを読み、感嘆し、愛し、批評し、批判し、再構築を試みる、という作業を続けている人々がいることに、改めておどろく。とくにこの「スタディーズ」シリーズは、ほんとにまぁ、ご苦労様といいたいほど、「真剣」にこの作家と取り組んでいるようだ。
再読を期す。
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