「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?
「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?
村上春樹 2000/08 朝日新聞出版 ムックその他 217p
Vol.2 No906★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
「これだけは、村上さんに言っておこう」2006/03や「少年カフカ」2003/06に連なる、ファン感謝デーな一冊だが、2000/08という発行年度を考えれば、こちらのほうがこのシリーズの元祖と言えるかも。いやいや、もっとさかのぼること、これらのシリーズに連なるものがあるかも知れない。今後ももう少し注意深く探してみよう。
いずれにせよ、この三冊の中に、私はほとんど違いを見つけられない。たしかに「少年カフカ」は「海辺のカフカ」の出版プロジェクトと同時にスタートしたネット上の実験だったわけだが、きっかけや発表形態はともかくとして、作家が「読者」と直接対話しようという姿勢と、村上春樹という人の「お人柄」については、それほど変化はないのではないだろうか。
もっともこの人、サイン会や講演会などをしないようだから、読者からの「欲求不満」をこのような形で発散しないことには、読者としても納得ができなくなる時がある、ということなのだろう。たぶん、形は違っても、今後もこのような形のものは表面かしてくるだろう。
内容的に、面白いか、面白くないか、と言えば、どちらとも言える。面白い部分は10分の1あり、面白くない部分も10分の1ある。残りの10分の8は、私にとってはなくても全然問題はない。あっても邪魔にもならないが、読まなくてもなんの不足も感じないだろう。
作家本人と読者、という関係以外に、編集者、出版プロデューサー、出版社、印刷会社、書店、翻訳者、紹介者、解説者、批判者、評論家、ライバル、文壇、歴史上の先輩後輩、奥さん、親戚、まったく赤の他人、などなどの、さまざまな関わりがあると想定される。
当ブログにおける村上春樹は、「クラウドソーシング」というカテゴリの中で、クラウドソーシングとしての「ハルキワールド」をたたき台の上に上げられているわけだが、これらのランダムな関係者全部をこのたたき台に載せていくわけには行かない。もっともコアな部分を抽出していきたい。
だから、むしろ村上春樹本人は、プロジェクトマネージャー的な位置に格上げしておいて、出版に関わる人、翻訳者、コアな読者、解説者、批判者、あたりを中心とした「クラウドソーシング」をイメージしていくのがいいのではないだろうか。
リナックスにおけるリーナス・トーバルスのように「それが僕には楽しかったから」とだけ言わせておけばいいのではないか(笑)。奥さんはともかくとして、ご本人は、評論や解説のようなものはいっさい読まないということだから、それはそれで無視していて構わないだろう。それに、当ブロブにおけるクラウドソーシング「ハルキワールド」は、基本的には、村上春樹本人とは、まったく関係のない形で展開していく可能性があるのであり、いずれ、そのプロジェクト名をまったく別のものにしても構わないのである。
まぁ、そうは言いながらも、こっらのファン感謝デーなシリーズは、長編であれ短編であれ、初期であれ、後期であれ、中期であれ、村上作品を理解するには役に立つ部分がいっぱい隠されている。もちろん、役に立たない部分もたくさんある。
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