「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?
「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?
村上 春樹 (著), 安西 水丸 (イラスト) 2006/11 朝日新聞社 単行本: 393p
Vol.2 933★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
例の「ファン感謝デー」な本。「そうだ、村上さんに聞いてみよう」2000/08、「これだけは、村上さんに言っておこう」2006/03に続く第3弾。2006/03~2006/06の間、暫定的に再開されたホームページでのメールのやり取りから構成されている。正直いうと、柳の下の三匹目のドジョウ、ということなので、内容に対しては、あまり期待していない自分がいる。
このメールのやりとりをしているあいだ、僕はアメリカのマサチューセッツ州ケンブリッジという小さな大学町に住んでおりました。ハーヴァード大学のあるところです。いりいろと日々やることもあり、決して暇というわけではなかったのですが、たまたま小説を書いていない時期にあたったので、「えーいまとめてやちまおう」とむらむらと心を決めて、ひたすらメールを書きまくりました。僕はだらだらものごとを続けるのがあまり好きではなく、短期間のうちに過激なまでに全面強行突入して作業をこなしてしまう方が性にあっています。p2
2006/03と言えば、ちょうど梅田望夫の「ウェブ進化論」が店頭に並び、ウェブ2.0とやらの話題が噴出し始めた時代である。当ブログもそれにプロボークされる形でスタートしたわけだから、ある意味、同時代的な背景をそれなりに理解できる。
しかし、それにしても、フリーソフトウェアとか、オープンソース、あるいはソーシャル・ネットワーク・サービス、クラウドソーシングという ウェブ2.0的な動きからは、どこか遊離した、かなりイビツな「ファン感謝デー」になってしまっているのではないだろうか。とそんな思いが先に立ってしまうので、この本を精読(って、いつも斜め読みの多い当ブログではあるが)するのは、もうすこし先延ばししよう。
パラパラと目次をめくって、気になったのは、「カラマーゾフの兄弟」とドストエフスキーについてのQ&A。当ブログでも、読み続けるには相当に難儀したが、ここをひととおり過ぎてしまうと、何事かのイニシエーションを通過したような、爽快感があることは事実。このような小説を書きたいと常々言っている村上春樹を理解するには、やはり副読本(どちらが副読本かは疑問だが)として、読んでおかなくてはらない1冊(いや3冊だか5冊だか、だった)。
あといろいろ興味深いことが、多々掲載されている。なんせ490のQ&Aである。これだけの、ちょっとぶしつけな質問や、突拍子もない質問に、答え続ける、ということは、やはりそうとうなタフネスをお持ちでないと、できないことだと、あらためてこの村上春樹という人を見上げた。
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