はじめての文学 村上春樹
「はじめての文学 村上春樹」
村上 春樹 (著) 2006/12 文藝春秋 単行本: 272p
Vol.2 930★★☆☆☆ ★★★☆☆ ★☆☆☆☆
最初は村上本人の初歩的な文学論かな、と思ったが、そうではなくて、比較的読みやすいショートショート的な短編をいくつもまとめた一冊であった。書かれたのは1990/09~2003/03の間、18編がまとめられている。簡単な漢字にもルビが振ってあるので、小学生でも読めるようにしているのだろうか。とにかく「村上春樹」を読みたいと思った「子供」が手にとれるように、安全対策がほどこされている。
村上の中編や長編につきものの「性描写」は、現代文学の中ではどのくらいポピュラーなものかしらないが、うちの娘などは、高校受験で進路が決まったあとに、入学式までに読む本としての推薦リストに「ノルウェイの森」が入っていたということだ。名作ではあっても、なかなか小学生や中学生にはお勧めできない。高校生でも、どうかな。
さて、こちらのショートショート集には、習作として書き連ねたような、雑多な小品がならぶ。なるほど、文才とはこういうものかと納得はするものの、だからどうした、と思わないでもない。この様なパーツパーツをいっぱいこしられておいて、全体のドラマツルギーという台紙の上に並べていくのかな、と、正直いうと、ちょっと興ざめな気分になる。
ここから全体的なテーマを見つけろ、と言われても、別段それだけの義務感を感じるわえでもなく、ここをスタート地点として、村上春樹の世界に本格的に入っていきなさい、と言われても、それもなんだかなぁ、と、ちょっと白け気味。
もしも村上春樹を小中学校の教科書に載せるなら、分量的にも、テーマ的にも、お手軽な作品はいくつか見つかるが、はて、それがハルキワールドを表現しているか、というと、ちょっと疑問。つまりは、ちょっと本道からはずれた春樹本、ということになろう。
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