ねじまき鳥の探し方―村上春樹の種あかし
「ねじまき鳥の探し方」村上春樹の種あかし
久居 つばき1994/06 太田出版 単行本: 237p
Vol.2 942★★☆☆☆ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆
この本には、ゆりかごから墓場まで、徹頭徹尾「ねじまき鳥クロニクル」の世界のことが、口述体筆致で書かれています。p5「まえがきにかえて」
とは言うものの、「ゆりかごから墓場」というわけにはいかない。なんせ、「ねじまき鳥~」3部がでていないのだから、「墓場」までは誇大広告である。グルービーな一冊というか、小判鮫商法というか、この本で「種あかし」の手ほどを受けているなら、「ねじまき鳥~」を再読したほうが、時間の有効活用ということになろう。
----「ねじまき鳥クロニクル」の第3部はどう展開されていくでしょう。
▼それは著者でないのでわかりませんが、私はもしかすると「僕」はひとりでバリ島にでかけることになるかもしれないなとおもったりはします。(中略)
また、「僕」は第2部の最後、すなわち1984年の「10月半ばの午後」に区営プールで「太陽のおおよそ半分を覆ったところで、そのままぴたりと浸食を中止してしま」った「正確な意味での日食ではない」ものを見ますが、それなら「僕」は第3部/第1章でバリ島において本物の日食を見てもおかしくはないなとも思います。p236
この辺の経緯やもうすでに15年前以上のやりとりなので、結末についてどうこう詮索している必要はないのだが、当ブログにおいては、実は「ねじまき鳥~」第3部は「鬼門」として、再読用に残してある。つまり、集中力が切れたので、めくっただけでひとまずの「読了」としておいた。しかし、この3部は実は大変重要な位置にあるだろう、ということで、今現在は、新規蒔き直しで、英気を養っているところなのである、実は。
「ねじまき鳥~」の時代設定は1984年である。そして、第1部、第2部がドンと一緒にでて、第3部だけが、あとから登場する、という形は「1Q84」に継承されている。「1Q84」のほうは、第4部(つまりbook4)以降も出る可能性があるので、なんとも言えないが、いずれにせよ、この「ねじまき鳥~」と「1Q84」の連環という図式も少しは意識しておかなくてはならない。
半分の太陽と、ふたつの月、なんてところも、シンボル的ではある。
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