TVピープル
「TVピープル」
村上春樹 1990/01 文芸春秋 単行本 p185
Vol.2 914★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆
表題となっている「TVピーブル」や「眠り」は他の短編集(「象の消滅」あたりだったか)ですでに読んでいた。いろいろなところでリンクが始まっている。そういえば、「1Q84」にでてくる少女は「ふかえり」だったが、「アフターダーク」にでてくる少女は「あさえり」だった。深と浅の違いだが、何事かのつながりを見つけては、そのシンボルのリンクのされ方や展開の仕方を読んでみるのも面白い。
この本に収録されているのは1989年に各雑誌などに発表された短編4編と、書き下ろしが2編である。「我らの時代のフォークロア」は、作者(主人公)の学生時代の旧友たちのことが書いてあり、その風景はまさに私が村上春樹という人に持っていた背景の典型的なものであると思う。
彼は私より5つ年上だから、私自身の「フォークロア」ではないが、そのような時代性があったということはよくわかる。また、そのことを1980年代後半になって一遍の小説にした作者の意識の存在のあり方もなんとなくわかる。もちろん2010年の現在では、古い感覚であり、そのような「フォークロア」自体が古臭いし、それを小説仕立てにする、という行為自体、ちょっと時代離れしているだろう。一読者として読まされるのも、ちょっとグッドタイミングだとは思えない。
しかし、このような一文をものしている作者がいたという認識の上で、それ以前やその後の一連の作品群を眺めてみるのは意義深い。
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