羊男のクリスマス
「羊男のクリスマス」
村上春樹 /佐々木マキ 1985/11 講談社 単行本 68p
Vol.2 914★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆
現在「ダンス・ダンス・ダンス」の上巻を読み終わったところ。突然、羊男が登場して面くらったが、そういえば、村上春樹といえば、羊男、というのがたしかひとつのキーワードとしてあったはずだ、と思い出した。よくわからないが、多分「羊をめぐる冒険」とやらを読めばその経緯はもうすこし判明してくるのだろうが、今はこのまま放置しておこう。
羊男というと、中学校の卒業文集の一言寄せ書きコーナーに、「羊の皮をかぶった狼」と書いたことを思い出す。なにやら二重人格的なイメージがないわけでもないが、実際は、当時のプリンス・スカイラインGTのキャッチフレーズだった。3ボックスできっちりしたスタイルでスーツを着た車みたいだが、実は、中身はスポーツカー並みで、実際にグランプリなんかで優勝していますよ、ということだった、と思う。
あとになって、これはBMW3シリーズのキャッチフレーズであることもわかり、「羊狼」なんて言葉もあることを知った。中学校時代は、水前寺清子の「ボロは着てても心はニシキ」なんて流行歌もあったので、そんな意味で書いたのだったが、まぁ、いまの段階での手がかりはそのくらいにしておこう。
佐々木マキは、この本で知るまで、すっかり女性のイラストレータだと思っていた。どこかで歌手・浅川マキのイメージと混同していたのかも知れない。彼が70年当時の「週刊アンポ」にかかわっていた、なんてことも今回初めて知った。
そういえば、初期の村上春樹のイメージは、よくもわるくもこの佐々木マキのイラストのイメージと重なっているところがある。積極的にあのイメージを上塗りしようとしていたのだろう。ピーター・マックスとか、靉嘔とかに通じるポップで蛍光色が強いイメージとして残る芸風。同じポップでもアンディ・ウォーホールの「雑念」(なんといっていいかわからない)とか横尾忠則の「情念」のようなものが、うまく処理され排除されている。
しかし、順序はどうか知らないが、たとえば、このような佐々木マキ的なポップなものに対して、村上本人は決して満足しておらず、たとえば「ノルウェイの森」のような「赤&緑」のような表紙カバーを強くプッシュする必要があったのだろう、と推測する。
いずれにせよ、この「羊男のクリスマス」は、村上春樹&佐々木マキの、当時のふたりの芸風がうまくマッチした傑作だと思う。
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