My Life in Orange: Growing Up With the Guru<8>
「My Life in Orange」 Growing Up With the Guru <8>
Tim Guest (著) 2005/02 出版社: Mariner Books; Harvest ペーパーバック: 320ページ . 言語 英語
「1Q84」を読んでいて、どこかの実在した集団性との関連で読もうとする評論家たちが多くいることに気付いた。空間も時間も、必ずしも限定されていない、虚構の世界であれば、それは読み手の自由にまかされており、虚構と実在をリンクして読み進めることは、あくまで個人的なものにとどまる限り、まったくお好み次第、ということであろう。
しかし、1984年にひとつの集団性に属していた「ふかえり」という10歳の少女の姿を考える時、私は自然にTim Guest のことを思い出した。彼は男性であったけれども、1975年の7月生れであってみれば、1984年には9歳だった。サニヤシンだった母親に連れられて、オレゴンのOshoコミューンに暮らしていたことがある。
バーチャル・リアリティの「セカンドライフ」追っかけをしていた時、「セカンドライフを読む。」という本に出会った。あれから2年半が経過した。一時はセカンドライフ・バブルか、などと騒がれたが、いまやブームとしては沈潜化してしまったイメージがある。ネット社会の次なるステージ、バーチャル・リアリティーの時代は来るのか、と、私なりに期待したところがあった。
その期待も、昨年末にパソコンにコーヒーをたっぷりご馳走してしまったために、セカンドライフ用のソフトの入った専用機がお釈迦さまになってしまった。もともと青息吐息だった私のセカンドライフ追っかけも、ハッキリ言って、命運を絶たれた形となっていた。
1981年、母親に連れられて、インド人導師バグワン・シュリー・ラジニーシの教えに従った生活を営んでいたサフォーク州のコミュニティに移り住む。ティム・ゲストはヨゲシと改名し、その後の子ども時代を、アメリカのオレゴン、インドのプネ、ドイツのケルンにあったコミュニティで過ごした。
やがて1985年にバグワンが逮捕されると、ノース・ロンドンで新たなる生活を始める。その数奇とも言える幼年時代と教団の生活を綴ったルポルタージュ文学「My Life in Orange」(本邦未訳)が、本国イギリスで高い評価を得た。仮想世界を中心とするメディア評論家、紹介者としても知られている。現在もノース・ロンドンに住む。「セカンドライフを読む。」p400著者紹介
Oshoについての、かならずしも好印象ばかりが綴られているわけでもなく、もともとコミューンの外で生れた子どもが、コミューンで住むことになったわけだし、まして本人の意志でそのコミューンに参加したわけではないので、ティム・ゲストが、良くも悪くも、コミューンの経過について理解できないことはたくさんあったはずである。
私は、「1Q84」を読み進めながら、どうしても、マックス・ブレッカーの「OSHO:アメリカへの道」とともに、このティム・ゲストのことが気になっていた。私は、他の集団性と混同されたり、何かの範疇といたずらにリンクされることを恐れて、あまり多くのことを語ることはよそうと思っていた。どんな展開になることやら、と、すこし首をすくめて、おとなしくしていた、とも言える。
しかしながら、現在までのところ、私が感知する範囲においては、「1Q84」とOshoを冷ややかな視線でリンクしようという動きはなさそうだ。もっとも私はそんなことを期待もしていないし、万が一そういう流れがあったとするならば、またまた火消し役を買ってでようか、などとさえ決意していた。
さいわいそのような際立った動きがないことにほっとしながら、それにしても村上春樹追っかけを一通り終了する段になって、むしろこの小説の虚構と、Oshoのリアリティをリンクしてみることに、いささかでも意義があるのではないか、と思い始めたのである。
1984年、コミューン、10歳の子供。この三つのお題をもらって小話をするとしたら、ティム・ゲストは、ちょうどお手頃な素材であった。テーマも「地球人として生きる」というカテゴリの中で読み進めるなら、時期やよし。多少、乱暴な入り方ではあるが、「オレゴンをめぐる冒険」も悪くない、そう思った。
そして、昨日、GoogleUSAを開いて、初めてこの若い作家が昨年の7月に、34歳で亡くなっていたことを知った。
今後、村上春樹の「1Q84」がbook3以下、どのような展開をしていくかわからないが、私はどうしても、このティム・ゲストと一緒に、もうひとつのパラレルワールド(それはバーチャル・リアリティと言ってもいいかもしれない)を旅したい、と思うようになった。
ティム・ゲスト。そしてスワミ・ヨゲシュ。若い死であった。冥福を祈る。 合掌
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