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2010/02/09

「本など読むな、バカになる」 安原 顯

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「本など読むな、バカになる」 
安原 顯 1994/07 図書新聞 単行本 286p
Vol.2 962 ★★★☆☆ ★★★☆ ★★★☆☆

「究極の愚作『ねじまき鳥クロニクル』精読批判」 

 あるとは聞いていたが、探してみたら、あまりに簡単にでてきたヤスケンの村上春樹批判。この本全体は、このために書かれたものだろうが、分量が足らなかったらしく、後半は、他のブックガイドになっている。今回、後半は割愛した。

 たしかに、「羊をめぐる冒険」とか「ノルウェイの森」、あるいは後の「海辺のカフカ」に比較すれば、「うずまき鳥クロニクル」三部作は、どうも首をひねらざるを得ない。ヤスケンは二冊組で出版された第二部までを持って批判しているわけだが、この本を書いている段階では、全五部作になるのではないか、という噂まであったらしい。

 それにしても、全二部で完結では、謎が投げっぱなしになってしまう。アメリカに滞在していた村上が、ポストモダンなさまざまな実験をしている、とか、新しい試みにさらに挑戦している、と言われても、はて、と一読者としては首をかしげることになる。

 裸の王様ではないが、言いたいことは言っておかなくてはならない。ヤスケンみたいに「究極の愚作」とまで決めつけることはできないし、もともとパラパラめくりの、スイスイ読みでしかない当ブログの読書は、「精読批判」などはできない。しかし、第二部までは、まだ、投げ出された謎解きを自分なりに受け止めて、さぁ、その第三部、となった時、はっきり言って、私の集中力は途切れた。これは面白くない。はっきりそう思った。

 後日、いや、やはり私の読み方が悪いのだろう、と思って、この第三部だけ再読した。しかし、評価は変わらなかった。私のパラパラめくりも、必ずしも舐めたものでもない。ほぼ大体のストーリーが頭の中に残っていた。ここも読んだし、あそこも見たよ、だけどなぁ、これじゃぁなぁ・・・。これが偽ざる本音だった。

 私にはヤスケンのような立場からは批判はできないが、ヤスケンは第三部を読んだあと、どのような評価をしたのだろう。私は、もともとこれが五部作である、と言われても、あと後半二部は読めないだろう。実際には、この「ねじまき鳥クロニクル」に掲げられたテーマは、別な小説に持ち越されているのではないだろうか。「1Q84」も「ねじまき鳥クロニクル」も、時代設定は1984年である。村上春樹は、ひょっとすると、あの小説を「書きなおして」いるのではないだろうか。そう見たほうが正しそうだ。

 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んだ時、私が用いたのは「表の表、表の裏、裏の表、裏の裏」という、二重のパラレルワールド読みだった。これは割と成功した。そのように読めばわかる、というポイントをつかんだ。「ねじまき鳥クロニクル」では、私は「ルーツ&ウィング」という概念でこの小説をつかもうとした。しかし、それは、成功したとは言えない。

 なぜ成功しなかったか、というと、それは私の読みが甘かったというより、テーマとしては(つまり亀山郁夫のいうところの「象徴層」としては)「ねじまき鳥クロニクル」は完結していなかったからである、と考えてみる。

 つまり、私は今後、「1Q84」を読み進めるにあたって、「ねじまき鳥~」を読んだ時に思いついた「ルーツ&ウィング」という「解法」を、こちらの「1Q84」にも積極的にあてはめてみようと思いはじめた。「ルーツ」=「物語層」、「ウィング」=「象徴層」とした場合、「&」こそ「自伝層」になる。仮に、かのドストエフスキーが「続編」で書こうとしたものが絶対権力と自由、テロルとその否定、科学と宗教などの対立の中で、その奥底に意識される『性』」というものであったとすれば、「ルーツ&ウィング」という図式は、極めてわかりやすく、真理を得ていると思える。

 安原顕=ヤスケン、その「精読批判」はなかなか痛快だが、ちょっと言葉の波動が荒いので、今回はその本文を引用しないことにした。

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