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2010/02/06

「1Q84」でノーベル文学賞はとれるか

<2>よりつづく 

村上春樹の「1Q84」を読み解く
「村上春樹の『1Q84』を読み解く」 <3>
村上春樹研究会 2009/07 データハウス 単行本 217p

「『1Q84』でノーベル文学賞はとれるか」p118

 日本の作家の中で、ノーベル文学賞にいちばん近いのは・・・・? と言われれば、やはり世界的な評価を受けている村上春樹であろう。p118

 この本は、各項目について、見開き2ページにまとめられているので、必ずしも突っ込んだ内容にはなっていないが、それでも、たしかに興味津津というテーマではある。

 候補と目されるには、客観的な根拠もある。ノーベル賞の選考のため、世界各地から文学作品を集めているノーベル図書館(ストックホルム市)に、村上春樹氏の本が18冊。現役作家では大江氏の45冊に次ぐ多さだという。ちなみに小川洋子氏が10冊、よしもとばなな氏が9冊、村上龍氏7冊と続く。アカデミーの認知度は、日本の作家では春樹氏がトップなのは間違いない。p119

 ここでリストアップされている18冊とは、なになにだろうか。「1Q84」は翻訳前だったから、それまでの長編で考えると、「風の音を聴け」から「アフターダーク」まで、冊数としてはちょうど18冊となる。長編が収められているのは当然としても、短編集もなかなか重要なものもあるので、収集されるのはこれからだろうか。

 海外の読者から広く支持される理由は、村上作品のシンプルさにあるといわれる。ある文芸評論家は、
「一種のファンタジー、隠された秘密を探る冒険物語です。そして喪失感を癒すその構成に、普遍的なインパクトがあるからではないでしょうか」
 と、その魅力を分析している。
p119

 村上作品を評価するのは自由だが、さて、伊東乾の「日本にノーベル賞が来る理由」の基準に照らしてみると、これだけの理由では、「1Q84」でノーベル文学賞は無理なのではないだろうか。少なくとも、川端康成の「日本のこころのエッセンス」、大江健三郎の「人類の進むべき方向性や理想を示すオピニオンリーダー」を超えるような、積極的な理由がほしい。

 ハルキワールドが世界の文学の頂点に立つ日も近そうな予感がする・・・・。p119

 これもはて、どうなのだろう。

 湯川さんへのノーベル賞は、いまだ焼け野原が広がる日本に「明るいニュース」としてもたらされました。
 当時の新聞をみると「日本で最初の栄誉」「世界に輝く中間子論」といった活字が踊っています。
 しかし、これによって敗戦で打ちひしがれていた日本が、戦争では負けたけれど科学では世界に認められたと、「ノーベル賞」=「科学の世界最高峰」と短絡してしまい、業績の内容や受賞の意味などを理解しないまま、お祭りと奉ることに慣れてしまいました。
伊東乾「日本にノーベル賞が来る理由」p40「ノーベル賞を勘違いした日本人」

 村上春樹の文学の内容をよく理解しないまま(現在の私のように)、日本は経済で敗北したけれど、「世界の文学の頂点に立」ったなどと、勘違いしてしまうことになってはまずいのではないかしらん。まずはとにかく村上春樹をじっくりと「読み解く」ことのほうが大事なことになろう。そして、それが本当に称賛される価値があるのかどうか、自分なりに理解していかなくてはならないと思う。

<4>につづく

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コメント

毎度勝手なときに、勝手な書き込みで
ごめんなさいよ
先日ケーブルTVのチャンネルを
変えていたらこの二人の対談で<1Q84>を~だいの大人が読む本じゃない~
と切り捨てていたが、この本を読んでもいないし読む気もないそして、このお二人に
何の共感もない私も
この意見に思わず「合点!合点!」と
( ̄ー ̄)ニヤリ
http://asahi-newstar.com/web/34_susume_2/?p=121

投稿: ラオツ | 2010/06/17 13:00

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