生きのびるためのコミューン―幻覚宇宙そして生活革命
「生きのびるためのコミューン」 幻覚宇宙そして生活革命
末永蒼生 (著) 1973/03 三一書房 単行本 237p
Vol.2 No.989★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★☆(残り35冊)
「もし僕らが生き続けるなら」ときたら、やはりこの「生き続ける」からの連想で「生きのびる」という単語が出てくる。出版されたのは殆ど同時の時代性。当時は、末永蒼生あたりと連携を組んで音楽ミニコミ紙「ニューヴァーブ」などを発行していた菅原秀 あたりがさかんに「サバイバル・セミナー」などを主催していたので、10代の私はよく参加させてもらった。当時「サバイバル=生きのびる」というのが一種の流行語だったのだろう。
この本をこのタイミングで思い出したのは、ぜひ読みなおしてみたい、というより、せっかく「末永蒼生関連リスト」を作ったのに、なかなかこの本をリンクするチャンスがなかったので、この機会しかない、というところにある。この本よりさらに以前に出版された「ウルトラ・トリップ」となると、さらに貴重で、かなり入手不能ということになろう。
一時はサニヤス名を持っていた人だが、最近の心境はどういうものかわからない。余人の察するところではない。さて、色彩学校とか、クレヨン先生、というようなイメージに駆け抜けてきた著者ではあるが、それはそれでいいとして、はて、たとえば当ブログで探求中であるところのZENマスター的視点から考えると、末永蒼生って、どうよ、ということになる。
ハプニングイベントとしてのアーティストから、子どもの絵の教室、そして、「精神分析学がわかる。」あたりにも執筆するなど、いわゆるセラピスト的な側面を見せ、まぁ、そこに安住の地を見つけたかのごとく、彼にしかできないような存在位置を獲得しているようではある。
そのことは慶賀に堪えないし、個人の内面についての考察は外側からはほとんどなにもできない、というのが本当のところだ。ただ、一読者としては、「ウルトラ・トリップ」や、この「生きのびるためのコミューン」に見られた、「ぜんえい」的な「かくめい」性は、はて、どの辺でどうなってしまったかな、ということが、ちょっと気になる。
7月9日ぼくは三重県春日山の山岸会本部を会場に設定した「頭脳戦線恍惚合宿」に向かった。山形サーバイバルのちょうど一週間後である。
これは名古屋でゴミ裁判を進めている<ゴミ姦団>や若いグループ<キック>を中心としてやはり50人くらいが参加していた。
予定されたプログラムは一切なく、やってきた人間によって次々にテーマは動く。山岸会の若者と討論する以外には、ほとんど野外へ飛び出し、山道を数時間歩きまわったり、湖ですっ裸になって泳いだりといった具合だった。p21「スローガンから生活実践へ」
これは72年の夏のことで、私もその場にいた。このところ村上春樹の「1Q84」の影響で、やたらと旗色の悪いヤマギシではあるが、当時はもっと開放的で未来性に満ちていたようにも思う。ただ、玉川信明の「評伝 山岸巳代蔵」を読んだりすると、ヤマギシの今日の姿があるのは、よくもわるくも、もともと因果として抱えていたのかな、と思う。
いずれにせよ、この本は面白い。どのページをめくっても、思い出すことが一杯あって、めくりだすと停まらなくなる。この人は絵を描く人、というより、文章を書いたほうがはるかに才能があるように、私には思える。当時のミニコミに原稿をもらったことがあるけれど、字も本当にきれいだ。後半では諏訪優と対談している。
物から離れ、”見えざる世界”を知覚しようとする新しい生き方の人間が世代的に登場したのが日本では60年代半ばである。当時18歳くらにぼくにとってはそれが”本当の自分”への眠りから醒めるはじまりだった。音楽や花、セックス、ラブ、ドラッグやヨガ、宗教などが新しい世代の生活の中心点に据えはじめられるようになる。p233「あとがき」
すべては、古き良き時代の物語である。あれから40年も経過してしまったのだ。世代だって、二世代変わったって不思議ではない。著者が「クレヨン先生」と呼ばれてもいいじゃないか。うん、それは分かっている。しかし、長い70年代後半から80年代前半を過ぎ、やがて80年代後半になって再登場した著者には、なにかの割り切りの良さがある。
その割り切りの良さがゆえに、「クレヨン先生」としての、彼にしか醸し出せないポピュラリティを獲得したのであろうが、古くからの彼の活動を支持してきた読者たちには、どこか寂しい思いを持った人が少なからずいたに違いない。
いや、それは彼個人の問題とは切り離して考えよう。彼には彼の存在様式があった。はまりどころにはまり役としてはまった。それは慶賀に堪えない。しかし、それでいいのか、という思いがある。それの思いは、もちろん、読者としてのこちらに向けられている。なにはともあれ、この一冊のことはメモしておかなくてはならない。
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