自由へのスパイラル・ダンス<5>
<4>よりつづく
「自由へのスパイラル・ダンス」<5>
洪 信子 (著, 原著), 兪 澄子 (原著, 翻訳) 1998/08 フィルムアート社 単行本 253p
洪 信子、シン・ホンジャ、Ma Prem Vartiya、Hong Sin-ja、Sin Cha Hong、など、さまざまな呼称の可能な彼女ではあるが、ハングルの文字での名前「홍신자」で画像を検索してみると、たくさんでてくる。はて、どこまでが彼女や彼女関連の画像か分からないが、これは彼女だろう、という画像も一杯でてくる。 「푸나의 추억-라즈니쉬와의 만남」が「プーナの追憶 ラジニーシとの出会い」(精神文化社刊)1993年292pということになる。すでに古書として流通している。
この本を読んでみたいが、ハングル文字のたった一個さえ読めない現在の私にとってはかなわぬ夢である。この本を買って、一頁一頁ずつスキャナで読ませて、それを翻訳機にかける、という手はあるが、それでも、大体の概略はつかめるはずだ。もっとも、だれかが翻訳して出版してくれるのが、もっともよいことなのだが、それはどこまで可能性があるのか、いまのところはまったくわからない。
ひょっとすると、すでに邦訳がでていたり、英訳がでていたりするかもしれない。あるいは、そのプロジェクトが水面下で進行しているかもしれない。なにはともあれ、ここに、読んでみたい、という読者のひとりがいますよ~、と大声で宣言しておこう。
ウィキペディアでSin Cha Hongを見てみると、短いがすでに a meditation master として紹介されている。なにも今更、当ブログがおっとり刀で彼女に、当ブログ特製の「ZENマスター」の称号を贈るまででもないようだ(笑)。インタビュー記事やニューヨークタイムスの彼女について記事などもリンクされている。
ネット上では、彼女は1943年生れという紹介のされかたもしているが、1963年に淑明女子大英文科を卒業しているp246とすれば、この「自由へのスパイラル・ダンス」巻末略歴通り、1940年生れととっていいのであろう。
このまま、彼女の韓国語に翻訳したOshoの本や、あるいは中国語に翻訳された彼女の本などを検索してみたいとは思うが、現在、収束過程にある当ブログとしては支線に入り込んでいく危険性を感じるので、この本をめぐる話題もそろそろこの辺で収束をめざそうと思う。
1973年、「祭禮」でニューヨークの舞踊界へのデビューを飾り、韓国の国立劇場で凱旋公演をはたしたホン・シンジャ。彼女の舞踊は当時の韓国人にとって衝撃以外のなにものでもなかった。時代は戒厳令下である。言論の自由、集会の自由を禁止する政治は芸術活動にも大きな壁として立ちはだかっていた。
金大中氏拉致事件、金芝河氏の筆禍事件等の例を挙げるまでもない。女性のミニスカートもだめなら、男性の長髪も禁止だった。日常生活に暗い影を落とす政治の重圧に打ちひしがれて、ただ暗欝な日々をすごすしかなかった人々は外の世界に、何よりも自由に渇きをおぼえていた。
そんなときにである。憧れの自由の国アメリカで、韓国人が、それも女性が自由に羽ばたいているということを知った時の驚き。その驚きはホン・シンジャの舞踊、「祭禮」への評価に勝っていた。というのも彼女は1970年代の韓国社会の先の先を歩いていて、その舞踊が理解できるほど社会はまだ成熟していなかったのだから。
渡米して7年目にして、彼女は韓国を振り向いた。そして幼児体験とも重なる姉の死をモチーフに韓国の伝統的なシャーマニズムの<招魂>の心を自分の舞踊に取り込んだ。新たなスタイルで組み立て直したのだ。が、それはニューヨークでの評価はさておき、当時の韓国舞踊界の常識を破る異空間の体現だった。
国立劇場の舞台の上で、それは外の世界の存在を暗示していた。
なぜ生きるのか。なぜ死ぬのか。なぜ踊るのか。兪 澄子p250「訳者あとがき」
この本がフィルムアート社から出版されていた、ということもなかなか象徴的なことだと思う。ましてや1998年という年代がまた曲者である。この年代、日本は例の麻原集団事件の影響で、いわゆる精神世界の本は全体的に苦境に立たされていた。その時代にあって、この本は、芸術分野の本として、芸術分野に強い出版社からでていたことは、日本の時代を考える時、なかなか興味深いものがある。
それはそれとして、彼女が提出する課題は、時代を超えて、私たちを心から動かす。
なぜ生きるのか。なぜ死ぬのか。なぜ踊るのか。
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