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2010/03/22

ダライ・ラマ 実践の書

ダライ・ラマ実践の書
「ダライ・ラマ 実践の書」 
ダライ・ラマ(14世) /ジェフリー・ホプキンス 宮坂宥洪 2010/01 春秋社 単行本 225p
Vol.2 No.1003★★★★★(残り21冊)

 ダライ・ラマ本としては最新刊に属する一冊であろう。原書は2002年に出された「実践の方法--有意義な人生への道--」(ジェフリー・ホプキンズ編)。欧米人を対象に仏教について語った講義録とされるp223。

 仏教を学ぶとは、どういうことか。古来、それは伝統的に「戒定慧の三学」として伝えられてきた。道徳な戒め、集中的な瞑想、智慧の練磨。この三つを学び修めることは仏教の実践の基本中の基本であると同時に、仏教の修行とはこれに尽きるといっても決して過言ではない。小乗・大乗を問わず、また発祥の地インドはもとより、仏教が伝播したいかなる地域においても、この仏教の原則は守られてきた。223「訳者あとがき」宮坂

 欧米人向けに語られた内容とは言え、春秋社という出版社を得て、本自体の翻訳は、まさにしっかりした日本の仏教的視点からも、かぎりなく正統的な一冊といえるだろう。翻訳者の宮坂宥洪の本は、ダライ・ラマ「ダライ・ラマ  ゾクチェン入門」、チョギャム・トゥルンパ「心の迷妄を断つ智慧 チベット密教の真髄」、同じく「タントラ 叡智の曙光」、などをめくったことがある。

 本書は単なる教義の解説書ではない。私たちは日常の実践の中で何をめざし、何をどのようにして身につけたらよいのだろうか。毎朝、数時間の瞑想を日課とされるダライ・ラマ法王みずからが実践して会得したことを、本書の中で法王は精根込めて、寸分の妥協もなく、しかもこの上なく滋味あふれる言葉で語っている。人生の実践の書として白眉の光彩を放つものである。p224「訳者あとがき」宮坂

 もうここまで言われしまうと、当ブログなどでは、不埒な気分で、内容についてどうのこうのと付け加えられることなどない。あとはひたすら拝聴するのみである。

 欧米においての「仏教」と言えば、かつては「ZEN」が主流を占めた時代もあったようだが、現在は、質量ともに、チベット密教がその主流を占めている、というレポートも読んだことがある。ダライ・ラマとチベット密教、並びに、国家あるいは地域としてのチベットが今日置かれている状況は、ただならぬ流動性のなかにあるわけだが、その中にあっての、彼らの求道の情熱は、いまだに一貫している。

 瞑想の基本形は二つあります。分析的瞑想と心を安定させる瞑想です。分析的瞑想とは、あるテーマについて論理的に考えて理解できるまで分析するというものです。たとえば、諸行はなぜ無常なのか、ということについて、いかに諸事象は原因によって生まれ、またいかに瞬間ごとに滅すかということを、つぶさに振り返って熟考します。こうして諸行は無常であるということを理解します。それは分析的瞑想の成果なのです。これに対し、心を安定させる瞑想とは、たとえば無常といったテーマなり対象に向けて心を固定するというもものです。(禅定は心を安定させる瞑想に属します。)p119ダライ・ラマ

 この本には、じつにいろいろな部分へのインターフェイスが含まれており、ここからさまざまな支線へ学びの道を伸ばしていくことができるようになっている。もしチベット密教のみならず、仏教を学ぼうとするなら、この本を再読、熟読することは、おおいなる導きとなるはずである。

 もし過去に起きたこと、あるいは将来起きるかもしれないことについて思い煩うことをやめられないならば、こころの焦点を自分の呼吸、つまり吐く息と吸う息に変えてみるのです。または、「オーン マニ・パドメー・フーン」(実際には「オンマニペメフン」と発音します)という真言を誦唱してみるとよいでしょう。人間の心には同時に二つのことに集中できませんから、こうした瞑想法はどちらも悩みを軽減させてくれるでしょう。p135ダライ・ラマ

 当ブログは、現在、当ブログなりの「ZENマスター」を尋ねる旅を始めたところだった。ダライ・ラマに、その「ZENマスター」なる役割を投影することは、あまりに不似合いな感じはする。ダライ・ラマとは、チベットの地においても、ごくごく限られた存在しかその名称を使うことができない。あるいは、それを頂点とする伝統や習俗が綿々とつづいている。

 実践の書。その意味するところは重い。「意識をめぐる読書ブログ」などといいつつ、あちこち目についた面白そうな本だけを蚕食しているような当ブログにおいては、あまりお気軽にこの本に触れるべきではないだろう。心してかからねばならない。

  オーン マニ・パドメー フーン

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