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2010/04/18

1Q84<6> BOOK3 読了

<5>よりつづく


「1Q84」 BOOK3 <6>
村上春樹 2010/4 新潮社 単行本  602p ★★★★★   

 休眠状態に入って、すこし静かにしていようという作戦であった当ブログ<2.0>へのアクセス数が、なぜかこの数日、予想外に急に伸びている。その一要因は「牛河」だ。4月16日に「1Q84」book3が発売され、天吾と青豆のほかに、急に新日本学術芸術振興会 専任理事 「牛河」がクローズアップされてきたのだ。過去の記事で、そのことに触れていた当ブログが検索エンジンにひっかかり、アクセス数が急上昇中、ということになった。

 そのbook3だが、先ほどようやく読了した。小説を発売当日に入手するなんてことも初めてのことだが、600ページを超える大作をその週末に読了してしまうなんてことも、始めての体験だった。感想はいろいろあるが、<2.0>は休眠中なので、先祖帰りしてこちら<1.0>にメモを残しておく。発売当初ということもあり、ネタばれしない程度に、雑感をランダムに記す。

1)これって、結局ハッピーエンド?

2)てっきりbook4もあるだろうと構えていたが、それは無しかも? 考えてみれば、「1月ー3月」編が存在するとすると、それは「1Q85」になってしまうので、すこし整合性が失われてしまう。

3)この小説でノーベル文学賞を取れるのか、と問われれば、まったくのシロートの私には「NO」としかいいようがない。与えられるとすれば、やはり、いままでの村上ワールド全体に対してだろうし、その頂点として、この作品が挙げられることもあり得るだろう。あとは、国際政治的なタイミングも問題となろう。

4)村上春樹作品の中の性描写があまり好きではなかったが、今回のこのbook3においては、それらは希薄になっているのではないか。

5)昨年、この作品の1、2が発表になった時は、カルトがどうの、左翼がどうの、という評論が続出したが、3においては、それらはすっかり影をひそめることになるだろう。

6)自他ともに許す小説苦手の当ブログにして、これだけの600ページの小説を一気に読ませてしまうのだから、多分、文体も、ストーリー展開も、時事性も、申し分ないぐらい超一流なのだろう。読ませられている方は、その技に気がつかない。

彼らがそのとき足を踏み入れたのは扉のない部屋だった。そこから出て行くことはできない。またそこれ故にほかの誰もそこに入ってくることはできない。そのときの二人は知らなかったのだが、そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、それでいて孤独に染まることのない場所だ。p551

7)まぁ、この部分がかなりのエッセンスの部分だとするなら、それはまぁ、当然のことというか、「世界のあらゆるところ」が「世界にただひとつの完結した場所」であるはずなのである。読んでいる読者に、ひとつの優越感や安堵感を与えはするが、絶対の真理ではない。

8)「牛河」はなぜ、これほど存在力を持ってクローズアップされてきたのか。ここではまだ多くを語らないでおこう。言い得ることは、ハルキワールドにおいて、牛河はなかなかの名脇役でありつつ、いつの間にか、主役をさえ担える存在に成長していた、ということだろう。

9)小道具としての車が、今回はあまり明瞭には浮き上がってこなかった。

10)「井戸」という単語はでてくるが、今回は「エレベーター」はなかったのではないか。児童公園の滑り台とか、首都高非常口の階段程度のものに、何事かの象徴を帯びさせようとしている。空や月、まぁ、それも深読みの対象にはなるのだろうが・・・。

とまぁ、あといくつか感想はあるが、もうすこし時期をずらして書こう。

<7>につづく

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