奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録
「奇跡のリンゴ」「絶対不可能」を覆した農家
木村秋則の記録石川拓治/日本放送協会 2008/07 単行本 207p
Vol.3 No.0004 ★★★★★
弘前に知人ができて、昨年も弘前に行ったけど、ことしも弘前に行くことになった。もうすこし弘前のことについて知ろうかな、と思っていたら、この本がでてきた。なんだか、この顔、あちこちの雑誌で最近見たな、と思う。無農薬栽培で、すごいリンゴを作るらしい、ということは分かったが、それ以上のことについて、あまり関心が湧かなかった。
だけど、今回、この本を読んでみて、なんとすごい本なんだろう、と、涙がでた。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」の制作過程の中で、この本の企画が持ち上がり、茂木健一郎などが後押しして、ノンフィクションライターが密着取材するなかで出来た本だという。
もともとの人間としてのこの人のキャラクターもなかなかのものだが、「わら一本の革命」の福岡正信との出会いかたも、すごい。ひとつひとつが物語仕立てだ。岩木山の中で命を断とうとして投げたロープが、幻の「リンゴの木」と出会わせたこと、何年もして、ようやく7つのリンゴの花が咲いたことなど、リンゴの生育過程などまったく考えてみなかった一読者としても、なんとも感動的なシーンが続く。
この本自体は、そのようなハッピーエンドの成功譚として書かれているが、本当に人生というものは、必ずしも、このように物語としてだけ語れるものではないだろう。だけど、それにしても、壮絶な生き方があったものだ。そしてまた、無農薬でリンゴを作る、という技術的なことだけではなく、そのリンゴで生活して見せる、という夢を実現するとなると、ただごとではない。そして、その「記録」は多分、現在進行形なのだ。
この人に関する本は、探してみれば、ご本人の著者を含め、他にもいくつかあるだろう。もっと続けて読むべきか、今しばらくはこの感動をそのままにしておいて、余韻を楽しむか。「奇跡のリンゴ」を求めて、ひとくち食べてみるか。いろいろあるが、やっぱり、この人から学ぶことは多い。いや、一時は「かまどけし」とまで言われた、ある意味で「変人」であるこの人を、尊敬したり、師匠にしたり、ということは、本当の意味ではできないのではないだろうか。
学んだり、教えたり、ということではなくて、なにか自然連鎖的な、なにごとかの出来事が触媒となって、次々と何かが起こり続けるような、そんな不思議なプロセスが待っているような気がする。ここにひとつのケースがある。そのケースは必ずしも「絶対」なものではない。しかし、そのケースは、決まり切った固定観念に収まっている思考範囲をぶち壊していく。カテゴリーキラーだ。
言ってみれば、ひとつの世界観をぶち壊している、とも言える。いまある体系にしがみつきたくなる保守性が騒ぎ出す。壊さないでくれ、と。だけど、壊さないでいても、いつかは壊れていくのがまた、あらゆる体系の本質なのだ。いや、すでに壊れかけている体系にしがみついているだけで、その本質を見ていないのが、大勢の無感覚な流れなのではないか。
どこかで、誰かが、気づく。誰かは失敗し、誰かは成功する。しかし、それは、一時的な成功譚であり、また、それらは、草葉の陰に隠れてしまう可能性は大きい。ひとつのマッドサイエンスのように、ひとつの「例外」のように、静かに無視され、消されていく可能性は十分ある。
この人の「奇跡」が、大いに評価されている、この「時代」というものが、「正しい」のか、「狂っている」のか。農家でもなければ、リンゴを人生の中心においているわけでもない自分が、いつまでもこの本や、この人のことを覚えているか、定かではない。まぁ、しかし、トンデモない人がいるものだと思う。そして、このようなトンデモない人に、ひとつの「啓示」を与える、この人生、この宇宙、この自然というものは、ホントにとてつもないものだと思う。
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コメント
歩楽styleさん
たかがリンゴなんだけど、されどリンゴで、深く見ていくといろいろと繋がりがあるものですね。
おいしいリンゴは本当においしいですから、買い占めたくなる気持ちもわかるけれど、それでも、不揃いなリンゴを食べてみても、結構オツなものです。
それにしても、品種改良、農薬体系に支えられた食料計画は、やはり危なっかしいものを感じます。(2010.05.02 20:32:18)
投稿: Bhavesh | 2010/06/14 00:12
リンゴ農家が、西太平洋まぐろが
チャンとしている日本のリンゴ農園、中国が実る前から買い占めてるとか・・・
マッドな事やってる、頭のいいひとがダイレクトに土と向き合ってくれると
・・・
進歩の無駄?!
10倍の人口の国、おそろし(2010.05.02 11:55:31)
投稿: 歩楽style | 2010/06/14 00:11