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2010/05/29

ギタンジャリ<2>

<1>よりつづく

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「ギタンジャリ 」 <2>
ラビンドラナート タゴール (著), Rabindranath Tagore (原著), 森本 達雄 (翻訳) 1994/09 レグルス文庫 新書: 243p
Vol.3 No.0028 ★☆

 Oshoの「Books I Have Loved」ssの9番目はギタンジャリ。タゴールには膨大な詩集があり、すでに一世紀前にノーベル賞を受賞している作家なので、出版されているバージョンもさまざまある。どこにターゲットを絞ればいいか、と躊躇したが、思えば「ギタンジャリ」はきわめてコンパクトな百余りのちいさな詩のあつまりであった。しかも、もともとのベンガル語から、タゴール自身によって英語に翻訳されている。

THOU hast made me endless, such is thy pleasure. This frail vessel thou emptiest again and again, and fillest it ever  with fresh life.

This little flute of a reed thou hast carried over hills and dales, and hast breathed through it melodies eternally new.

At the immortal touch of thy hands my little heart loses its limits in joy and gives birth to utterance ineffable.

Thy infinite gifts comes to me only on these very small hands of mine. Ages pass, and still thou pourest , and still there is room to fill. <1> p3

このレグルス文庫版のすぐれているところは、巻末に英文の103の原詩が60ページ弱に渡って収録されているところ。

 おんみは わたしを限りないものになしたもうた---それが おんみの喜びなのです。この脆(もろ)い器を おんみはいくたびも空(から)にしては、つねに 新たな生命(いのち)でみたしてくれます。

 この小さな葦笛を おんみは 丘を越え 谷を越えて持ちはこび、その笛で 永遠(とこしえ)に新しいメロディーを吹きならしました。

 おんみの御(み)手の不死の感触に、わたしの小さなこころは 歓(よろこ)びのあまり度を失い、言葉では尽くせぬことばを語ります。

 おんみのとめどない贈り物を わたしは この小さな両の手にいただくほかはありません。幾歳月かが過ぎてゆく、それでもなお おんみは注ぐ手をやすめず、そこにはまだ満たされぬゆとりがあります。
<一>p29

 対訳を並べてみると、実に邦訳者もデリケートにものごとを進めているのがわかる。転記しているこちらもまた、小さな句読点にさえ、気を使う。傍点のところは太字にした。もともと縦書き、横書きの違いさえ、イメージの違いを生むだろうが、そこまでは完全を期することはできない。

 Oshoはこの詩を英語で読んだのだろうか、もともとのベンガル語で読んだのだろうか。あるいは、ネイティブ・ベンガル人の詠唱を聴いたかもしれない。現在の日本ではタゴールに関する資料は多くある。「ギタンジャリ」を入り口にすれば、悠久のインドへの旅をタゴールはナビゲートしてくれるだろう。

 Oshoがこのタゴールをセッション1の中に選んだことから考える。かの10冊は殆ど詩ではないだろうか。山上の教訓といい、ミルダッドの書といい、あるはニーチェやドストエフスキーだって、ミラレパやジョナサンにしたところで、そこにあるのは、事実の描写とか、合理的な整合性を誇る論理ではない。ひたすら詩情である。

 科学的な、合理的な、論理ならば、一度読み、一度理解すれば、ほとんどそれは役目を終えたことになる。しかし詩となると、一度で味わい尽くせるものでもなく、一度目をとおしたからと言って、それを理解したともいえない。読むたび、触れるたびに印象がかわる。それは生きているから。生きている読み手側の触れかたによって、どんどん成長していく。

 「Books I Have Loved」ssは10の詩編から成っていると考えることができる。そして、それは、全部で、ひとつの詩とさえ考えても差し支えない。読み返すたび、新たないのちが噴き出す。新しい本もあり、古い本もある。ひとつひとつがまた独立したユニークな存在だ。それにも関わらず、それぞれがそれぞれに共鳴しあっている。

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