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2010/06/12

ツァラトストラかく語りき (下巻)<6>

<5>からつづく

ツァラトストラかく語りき (下巻) (新潮文庫)
「ツァラトストラかく語りき」 (下巻) <6>
ニーチェ (著), 竹山 道雄 (翻訳) 文庫: 1953/04 新潮社 文庫 641p 
☆☆☆★★

 この1953年版のツァラトゥストラを読みながら、半ばあきらめ、半ばおののきながら、次第に物語の中に呑みこまれていく自分がわかる。旧漢字体が醸し出す古色な感じは、古典を読んでいるという自覚を与えてくれるが、実際には読みにくく、いちいち調べなければ、意味を取り違えたり、意味そのものをつかむことさえできないことがある。そのことがストーリーを追いかけることに疲労感を与える。

Photo_9  思えば、この小説にはいくつもヴァージョンがある。口語体、文語体、古典的な雰囲気を踏襲しているもの、あるいは超現代的に読めてしまう新訳など。いずれを貴しとするかは、それぞれを読み比べたことがないので分からないが、「ツァラトウストラはこう言った」とか、ただ単に「ツァラトウストラ」だと、なんだか物足りない感じがする。やはり、ここは、Thus Spake Zarathustra、「ツァラトゥストラかく語りき」と来ると、おおニーチェを読んでいる、という感じになる。

 ツァラトゥストラに限らず、BIHLにすでに登場した本の中にも、さまざまなヴァージョンがあるものがある。「ソクラテスの弁明」だって、かなりの数があるはずだ。老子や荘子、列子なども、いずれのテキストを使うかによって、そのイメージは大きく違ってくる。読んでもまったく意味がない、あるいは意味が違ってしまうものだってあるはずだ。

 先日読んだドストエフスキーの「カラーマゾフの兄弟」も、21世紀になってでた新訳だからこそ読了したとも言える。その証拠に、以前から持っているものは何十年と積ん読になっているだけで、完読した記憶がない。やはり、ここは、BIHLそれぞれに、これがお勧め!というヴァージョンをメモしておくのも悪くないかもしれない。

ニーチェの「ツァラトウストラ」には、次のようなヴァージョンがあるようだ。

0)「如是経 一名 光炎菩薩大獅子吼経 序品 つあらとうすとら」登張信一郎・訳注1921/10   

1)新潮文庫「ツァラトストラかく語りき」竹山道雄・翻訳 1953/04 

2)岩波文庫「ツァラトゥストラはこう言った」 氷上英広・翻訳 1967/01

3)中公文庫「ツァラトゥストラ」 手塚富雄・翻訳 1973

4)理想社「ニーチェ全集第9巻ツァラトゥストラ」吉沢伝三郎・翻訳 1977

5)白水社「ニーチェ全集第2期第1巻」薗田宗人・翻訳 1982/11 

6)ちくま文庫「ツァラトゥストラ」ニーチェ全集9・10  吉沢伝三郎・翻訳 1993/06

7)中公クラシックス「ツァラトゥストラ」中央公論新社 手塚 富雄・翻訳 2002/04

8)島影社「ツァラトゥストラ」小川修一・翻訳 2002/11

9)光文社古典新訳文庫「ツァラトゥストラ」丘沢 静也・翻訳 2010/11 

 ざっと見た限りだが、K氏によれば、3)中公文庫・手塚富雄翻訳と、5)理想社「ニーチェ全集」吉沢伝三郎翻訳あたりがお勧めということである。8)島影社・小川修一翻訳も新しいだけに読みやすかった。全部読み比べる、というわけにもいかないが、読んだ人の意見を集めてみるのも面白そうだ。

<7>につづく  

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コメント

☆komoriさん
失礼、リストの順番を入れ替えたので、一個づつ変わってしまいました。m(_ _)m
訂正しました。
現在、中公クラシックス手塚訳とOsho本を併読中です。

投稿: Bhavesh | 2010/06/13 23:15

そうでなく、お勧めは3)と5)ですよ。

投稿: komori | 2010/06/13 22:28

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